「不都合な真実」も含め実態を洗いざらいにするしかない野田首相

「不都合な真実」も含め実態を洗いざらいにするしかない野田首相

塩田潮

 「消費税国会」が24日、開幕した。
 野田首相は施政方針演説で、全体の3割の時間を当てて財政再建の必要性を訴えたが、同じ増税派の与謝野元経財相は先週末、インタビューで「もっと数字を示して具体的に説明すべき」と注文をつけた。確かにここまで首相の言葉は危機感の強調と決意表明のオンパレードで、具体性に乏しく、上滑りの感がある。

 国の借金は今年3月末で985兆円、対GDP比(10年度のGDPは479兆円)は先進国中、最悪の206%だが、国債(残高は11年9月で774兆円)の国内消化が93%以上、対外純資産が3兆ドルという事情もあり、危機は起こらなかった。
総額1491兆円、ローンなどを除き実質1138兆円という国民の個人金融資産(11年6月)が支えとなってきたが、消化の余力は153兆円だ。12年度の新規国債発行が44兆円で、このペースだと、3年半後に天井に届く。だが、償還に備えて積み立てる債務償還費12兆円が歳出の国債費に含まれているから、実際の国債残高の増加分は32兆円と見れば、天井まで5年弱という計算になる。

 さらに元大蔵官僚の高橋洋一氏によれば、10年3月末の国のバランスシートでは、国の資産は 647兆円で(負債は1019兆円)、将来の年金のためにとっておく運用寄託金121兆円などを除いても、約300兆円は売却可能だという(『財務省が隠す650兆円の国民資産』)。負債と資産の差の372兆円が実質的な国の借金なら、対GDP比は78%弱となる。

 以上のような基礎的な数字も含め、首相は今後の国会審議で具体的な説明を行うつもりと見られるが、数字の提示を進めれば、見えない国の資産や「埋蔵金」と呼ばれる特別会計の積立金の余剰資金などの「不都合な真実」が明らかになり、「増税不可避」の構図が崩れるという心配もあるのかもしれない。
財政赤字の放置は容認できないが、次期総選挙で国民がノーと言えば、増税計画はストップとなる。「国民との結託」なしに実現しないのだから、野田首相は「不都合な真実」も含め、実態を洗いざらい明らかにして理解を得るしかない。
まさか首相も「真実の全部」を掌握していないなんてことはないと思うが。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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