北尾吉孝氏は「バイオ・エンジェル」になった SBIがバイオ事業の育成に邁進する理由

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その後の研究で、糖と脂肪の代謝を促進させることもわかってきた。植物だけでなく、飼料や、人間用の化粧品、サプリメントなどにもなる。たとえば、家畜の感染症蔓延を防ぐために飼料に抗生物質を混ぜるが、耐性菌ができるという問題がある。ALAは体内のエネルギー産生を活性化する、つまり免疫力が向上して抗生物質が不要になる。

2013年3月には、グリオーマ(悪性神経膠腫)の経口診断薬の承認を取得し、すでに販売している。膀胱がんの診断薬も今年5月から臨床3相入りした。がんの化学療法による貧血の治療薬として、英国での臨床1相が終了したし、国内では埼玉医大で医師主導治験の臨床2相が進行中です。

その他、アルツハイマーやパーキンソン病、難治性神経変性疾患、ミトコンドリア病、抗がん剤からの腎保護、インフルエンザ重症化阻止、マラリアなど多岐にわたる研究を内外の大学や研究機関とやっている。バーレーンでの膀胱がんではオーファンドラッグ指定が取れたし、大学や病院との研究の進捗は良好で、早く認可が下りるかもしない。健康食品や化粧品もすでに販売しています。

ALAとiPSは広がりのあるテーマ

――今後の開発の方向性は。

やはりiPS。これは広がりのあるテーマ。今年、投資先のリプロセルと共同で、ALAを使って、iPS細胞から分化誘導した細胞内に残留したままのiPS細胞を選択的に除去する技術を開発した。残留iPSにはがん化のリスクがあることが知られていて、これを除去することは、iPSの応用開発に大変に重要な技術だ。これをテコに再生医療分野にも参入していく。

ALAは病気を治すだけでなく、病気にならない体を作ることができる物質。病気になる以前、未病のうちに治してしまえば医療費の削減につながる。世界で治験を進めており、要件が早くそろったところからどんどん販売していく。最初はALAで日本人を救うつもりだったが、いまでは世界を救おう、という風に社内も変わってきている。

バイオ分野の収益は2015年3月期には税引前利益で73億円の赤字だったが、5年後にはグループ全体の利益の4分の1に、10年後には利益トップにしていく計画。創薬の利益率は高いですから、利益額は3ケタになっているかもしれません。 

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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