北尾吉孝氏は「バイオ・エンジェル」になった SBIがバイオ事業の育成に邁進する理由

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北尾吉孝(きたお よしたか)/1951年兵庫県生まれ。74年慶応義塾大学経済学部卒、野村証券入社。78年英国ケンブリッジ大学経済学部卒。89年ワッサースタイン・ペレラ・インターナショナル(ロンドン)常務、野村企業情報取締役、野村証券事業法人第三部長を経て、95年孫正義氏の招へいを受けソフトバンク常務に。99年ソフトバンクインベストメント設立、社長就任、2002年東証1部上場、05年SBIホールディングスに社名変更、06年ソフトバンクから独立。『実践版 安岡正篤』(プレジデント社)など著書多数

――投資の際の目利きはどなたが?

バイオテックには新井賢一先生(取締役会長、前東大医科研所長)がいますし、ファーマにも、当社の主要製品ALAの大量生産法を開発した田中徹さん(CTO)や東大などのアカデミアから海外大手製薬のサイエンティストも勤めた中島元夫さん(CSO)など専門家がたくさんいる。

彼らの人脈に加えて大学に寄附講座もあり、人脈は豊富だ。

こういった先生方に相談し、最終的には私自身の勘で決めている(笑)。僕は慶應の経済学部出身だが、もともとは分子生物学をやりたくて医学部を受験した。残念ながら落ちてしまったが、そういった方面への興味はずっと持っており、今もいろいろな書籍や論文を読んでいる。カンを働かせるポイントは、「技術」と経営者の「志」だ。

「技術」に関しては、アドバイザーの先生方をはじめとして必ずしもコンセンサスが得られるわけではないが、経営者がダメなのはダメ。「志」のない経営者はすぐにわかる。

志の高い経営者に賭ける

――今年に入ってからは、取締役会を乗っ取られてCEOの座を奪われたアキュセラ(東証マザーズ)の創業科学者、窪田良博士の窮地を救いました。

アキュセラは、ドライ型加齢黄斑変性という、現在まだ治療薬のない病気の薬を開発しています。欧米だけでも3000万人の患者がいる。

窪田さんは、慶応義塾大学医学部の助手時代に緑内障の原因遺伝子である「ミオシリン」を発見している。教科書にも載るくらいの大発見で、そのまま大学に残って教授になることもできた。しかしそうはせずに、虎の門病院に移って臨床医として手術の腕を磨いた。

その経験から、目の前にいる患者だけでなくもっと広く患者を救いたいと思うようになって、現在は創薬に挑戦している。脳が得る情報量の80%は目から得ているのに、途中で失明してしまうということは、患者にとって大変なショックであることに気づいたからだ。

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