日本は再生医療で世界に貢献できる 岡野光夫・東京女子医大名誉教授に聞く
――岡野先生が日本再生医療学会の理事長を務めた6年間を振り返って、同学会や再生医療はどう変わりましたか。
日本再生医療学会は、再生医療という横串を通す形で、基礎医学から臨床医学まで、あるいは関連する理学、工学、薬学にもわたり、医学についても外科・内科、心臓、肝臓など、さまざまな専門分野を含めた横断型のまったく新しいしくみを作った。今まで日本では横断型のしくみはあまり動かなかったが、再生医療学会は上手に立ち上がったのではないか。
2001年に(前身の細胞療法研究会から)日本再生医療学会ができ、2002年1月に会員数が1000人を超えた。その後、日本組織工学会と合併し、2009年1月に3000人、今年5000人を超えている。
再生医療はまだ手探り状態にある。それでも、移植医療のための臓器が不足する中、切迫したニーズがあることは間違いなく、再生医療を専門とする研究者の数は急激に増えている。
改正薬事法が再生・細胞治療に大きな後押し
――その急激な変化のきっかけになったのは?
一つの大きな引き金は、細胞による治療が実際に始まったこと。細胞シートでも多くの患者を治しているし、iPS細胞でも、理化学研究所の髙橋政代プロジェクトリーダーが網膜の病気の患者一人を対象に臨床研究を行っている。
もう一つ、とても大きかったのが法改正だ。2013年5月に通常国会で議員立法の「再生医療推進法」ができ、2013年秋に「再生医療等安全性確保法」と「医薬品医療機器等法(改正薬事法)」が成立した(2014年11月施行)。
たとえば、製品化のための治験について、今までは絶対にがん化しないことをはじめとして、クリアしなければならない項目が膨大にあったが、「発がん性など安全性に関することは譲歩できないが、効果に関してはやりながら確認しましょう」という条件付き承認制度を国が作ってくれた。これまでの「医薬品」「医療機器」というカテゴリーのほかに、細胞組織製品などが当てはまる「再生医療等製品」という第3のカテゴリーも新設されている。現実的なしくみが動きだそうとしており、いま世界からも注目されている。