なぜ地方の観光地は変われないのか 地縁血縁型の「地元プレーヤー」はもう限界

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これは宿泊施設だけでなく、土産物屋や観光地の飲食店にも言えることです。

こぞってどこでも同じような商品を並べ、どこの地域も、地元向けのパッケージに変えただけで、中身はほぼ同じの温泉まんじゅうなどが並ぶ。さらに、観光地の飲食店といえば「観光地価格」で、大した品質でもないものを高く売りつける。

これらの商慣習は合理的であったとも言えます。

つまり、多くの人が指摘するように、団体が観光の主流だった時代まではよかったのです。しかしながら平成バブル崩壊後は個人旅行が中心になり、個々人が観光ルートを設計するようになり変化が始まります。さらにネットでの手配が増加し、従来の「一見さんビジネス」は評判が知れ渡り、能動的な観光客はますます泊まらなくなっています。

しかしながら、わかっちゃいるけどやめられない。一見さんビジネスを続けているから、一定の団体客はくるものの個人客が遠のき、自力では顧客を集められない。集められないからますます団体旅行や代理店手配の客ばかりに依存するという構図です。

地縁と血縁による「横並びルール」で縛られ過ぎ

さらに観光地においては観光協会、旅館協会など、さまざまな協会が存在し、「横並びルール」を極めて重要視しています。

例えば、土産物屋などの営業時間も横並びで夕方5時閉店となれば、皆でそれを守らなくてはならないといった具合です。

夜営業しても客はほとんど来ないからやらない。これは商店街でもよくあるパターンです。

「客が来ないから店を閉店する」というけれども、店を閉めれば、そもそも客がくるはずがありません。さらに客が遠のくから、ますます営業時間が短縮されていく、という負の連鎖です。そもそも「客が来るから店を開く」という発想自体がおかしくて、いかに客にきてもらえるかという「知恵出し」を放棄してしまっているわけです。夜も開いて、夜来てもらえる営業企画を考えよう、朝も開けて商売になるにはどうするか、ということにはならないわけです。

これには、地方の観光産業が地縁型事業であり、家族型事業であるという側面が強くあります。

地縁型事業だからこそ、もし横並びルールを逸脱し、地域でにらまれると営業が行いにくくなる。「ムラ社会システム」を壊してまでリスクは負いたくない。さらに家族型事業だから、無理してまで業績を伸ばすのではなく、一定の規模を維持できればそれで十分という思考になりがちです。何より、黙っていても、有名な観光拠点があるために、一定の集客を実現できる立地の土地・不動産を保有して営業していればどうにかなる、という恵まれた観光地ほど、この傾向は強いのです。

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