「右傾化」しているのは、日本だけではない

国家主義勢力が衰えない理由

揺り戻しが生じても、振り子の支点は右に向かっている(写真:Toru Hanai/ロイター)

新右派連合台頭の中勢い増す国家主義勢力

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1990年代半ば、新進党が躍進する一方、自社さ政権下の自民党内ではリベラル勢力が主流を占めた。小泉政権下では民主党が躍進する中、自民党内では右派が台頭した。民主党政権時代、野党に転落した自民党はさらに右旋回、対抗勢力に合わせて立ち位置を変化させ支持を回復した。民主党凋落で今度はリベラル勢力を取り込むべく、左にウイングを広げると予想したが、そうはなっていない。

本書は過去30年の日本政治の右傾化を論じたものだ。揺り戻しが生じても、振り子の支点は右に向かっていると論じる。

戦後、自民党の旧右派連合の政策はキャッチアップのための開発主義と、成長に取り残された人々の支持獲得を狙った恩顧主義の二つに特徴付けられた。成長の時代の終焉で開発主義は限界に達し、同時に都市部の無党派層の台頭で恩顧主義や金権政治が批判に晒され、旧右派連合は衰退に向かう。冷戦終結で国際環境も変化し、市場経済の追求と共に、軍事面での応分の負担が求められ、新自由主義と国家主義的な特徴を持つ新右派連合が台頭したという。

興味深いのは、米英での同様の動きだ。レーガン以降、米国ではクリントン時代を含め保守化が続いた。サッチャー以降の英国でも同様だ。本書は日本の新右派転換が政治主導で、社会主導ではないと言うが、独仏でも政官財の寡頭勢力が台頭しており、世界的潮流ではないのか。

今後どうなるのか。新右派連合内で新自由主義勢力と国家主義勢力が激突、後者が優勢を増すと論ずる。グローバリゼーションや技術革新がもたらす格差拡大への反発が各国で見られ、日本でも左右を問わず反TPP運動が広がっている。世界経済は再びキナ臭くなっており、経済的苦境の広がりで国家主義勢力が勢いを増すことが心配だ。

著者
中野 晃一(なかの・こういち)
上智大学国際教養学部教授。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。1970年生まれ。東京大学文学部哲学科および英オックスフォード大学哲学・政治コースを卒業。米プリンストン大学で博士号(政治学)を取得。著書に『戦後日本の保守主義』など。

 

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