なぜ子どもの性的虐待は、闇に葬られるのか

親や近親者は必ずしも助けてくれない

子どもの頃に性的虐待にあった人は、大人になっても苦しんでいます(写真は植田恵子さんのショートフィルム「性被害 援助交際の本当の理由」より)
あまり知られていませんが、日本の子どもは高い頻度で性虐待、性被害に遭っています。大人が見て見ぬふりをして、被害経験に耳を傾けないため、子どもたちは被害届も出せず、親にも言えないまま成長し、死にたい気持ちを抱えていることが多いのです。
前回記事に続き、被害者の体験談を基にショートフィルム「届かぬ声 『性被害』 ほんとうのこと」を制作したジャーナリストの植田恵子さんと、弁護士として性虐待被害者の話を数多く聞いてきた寺町東子さんに対談していただきます。驚くべき実態を伝えるとともに、被害者救済策を考えます。
前回記事:誰も語らない、子どもの「性的虐待」の現実

 子どもの性的虐待は、時効が壁になっている

――前編では、性被害、性虐待に遭っても、親や友達に言えずひとりで抱え込んでいる女の子の実状をお話いただきました。被害者支援や救済の障壁について、植田さんから「周囲の反応と無理解」のお話がありました。法律面ではいかがでしょう。

寺町:ひとつ大きな問題は「時効」です。私が担当した釧路の性虐待事件で、被害者は民事訴訟を起こし、加害者に対して損害賠償を求めていました。ハードルになったのは、民法724条にある「除斥期間」の規定です。

これはみなさんもよく知っている「時効」のひとつで す。社会の安定や予測可能性を重視する発想で作られた規定で、商取引などに当てはめるのはいいと思いますが、性虐待に適用するのは間違っている、と私たち弁護団は考えました。

法律をしゃくし定規に解釈すると、子どもが被害者の場合、一定期間内に法定代理人の親が代わりに訴訟を起こすべき、ということになります。けれど、性虐待、とりわけ親族が加害者の場合、親は世間体などを気にして被害者(子ども)を守ってくれないことが多い。つまり法定代理人の責任を果たせません。父親が加害者の場合、母親は被害者の子どもでなく加害者の味方をすることすらあります。離婚すると生活できない場合はなおさらです。

また、前回もお話したように、子どもだと、本人が被害に気づけないことが多いのです。釧路の事件で、被害者は、中学2年生のときに初めて「自分はレイプされたのだ」と気づいたそうです。自分がされたのはセックスで、それは普通、夫婦や恋人とするものだと知ったとき、「頭の後ろで爆弾が爆発したような気がした」そうです。

こうした実状を踏まえて、私は、性的虐待の時効を大人になるまで停止することと、子どもが日本全国どこでも助けを求められる体制づくりを求めて、ネット上で署名集めをしています 。

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