岐阜発「楽園企業」は、社員旅行も豪華すぎる 社内「写真コンテスト」の賞品もヤバい!

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豪華社員旅行を推進したのは創業者の故・山田昭男氏だ。山田氏は生前、それを「アメ・アメ・アメ」作戦のひとつだと話していた。

「『アメ』をやるから働け」は社員をバカにしている

一般には「アメとムチ」と言われるが、山田氏の考えは違う。「アメ・アメ・アメ」で、とにかく社員をまず喜ばせるのが先決。「アメ」をもらった後、「ここまでやってもらったから一生懸命働こう」という社員の働きに期待するのだ。

山田氏が筆者に語った忘れられない言葉が3つある。

1.「アメとムチはもう古い」

「経営者や管理職の仕事は、社員や部下の不満をできるだけ減らすこと。社員や部下が喜ぶ『アメだけ』を与え続けるべきだ」

2.「日本人の『きまじめな義務感』を刺激する」

「普通の日本人なら、『会社がここまでよくしてくれて悪いな。それなら、自分たちもこれぐらいは仕事を頑張ろう』と考えるはず。そんな日本人らしい『きまじめな義務心』を刺激したほうが、社員は会社のために頑張って働いてくれる」

3.「ノルマ主義は社員を『馬扱い』している」

「『ノルマを達成したら、会社は社員に給料を払いますよ』というのは、馬の目の前に『好物のニンジン』をぶら下げて、ムチでたたきながら走らせるのと同じ。社員を『馬扱いする』のが、経営者の正しい態度なんか?」

社員を信用し、「性善説」に立ったほうが、結果として、会社の生産性も上がり、会社も儲かる。そのために未来工業は創業以来50年間、売り上げ目標を立てたり、営業ノルマを社員に課したりしたことが一度もない。

冒頭の2億円会社持ちの社員旅行や、1年休暇などの「常識外れ」な賞品の数々。それらは、「社員を喜ばせてやる気を引き出す」、彼の経営観「アメ・アメ・アメ」作戦の一端にすぎないのだ。

山田式「アメ・アメ・アメ」経営と、社員を「馬扱いする」経営――。

あなたなら、どちらのほうが、会社のためにより頑張れるだろうか?

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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