新手のVCは、UberではなくHertzに出資する 冴えないライバル企業に注目

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サンフランシスコを拠点とする小さなヘッジファンド「ピア88・インベストメント・パートナーズ」の創業メンバー(写真:Peter Earl McCollough/The New York Times)

宿泊仲介サイトのAirbnb(エアービアンドビー)はここ数年、フィデリティ・インベストメンツやT・ロウ・プライスなど大手投資会社が競うように投資するおかげで、企業価値が高騰している。一方で、サンフランシスコを拠点とする小さなヘッジファンド「ピア88・インベストメント・パートナーズ」は、Airbnbへの投資熱が創出する別の機会に目をつけた。

非上場企業のAirbnbは投資家の注目を集め、最新の資金調達ラウンドでは評価額が240億ドルに達した。しかし、ピア88はAirbnbに直接投資するのではなく、ライバルであるホームアウェイの株を買った。上場しているホームアウェイの時価総額はわずか29億5000万ドルだ。

狙い目は新興企業がライバルの上場企業

ピア88の共同創業者フランク・ティモンズ(46)とリアンヌ・シュヴァイツァー(32)は、非上場企業と上場企業の評価額の大きな差に、投資機会を見いだす。Airbnbのようなスタートアップとの競争を優位に運びたい企業が、ホームアウェイなどの上場企業を好条件で買収する可能性を考えれば、比較的「お買い得」というわけだ。買収価格は50%以上のプレミアムが上乗せされる場合も多く、ピア88の投資の収益も増える。

「上場企業の株が安めなのは、本質的な問題があるからだと思いがちだ」と、ティモンズは言う。

「でも、それなりの企業の株を、未公開株の市場に比べて割安で買えば、リスクは私たちの味方をするだろう」

スタートアップに直接投資するのではなく、スタートアップのバブルを利用して利益を得る。それがピア88のような投資家の戦略だ。フィデリティやブラックロック、タイガーグローバルなど大手の投資会社やベンチャーキャピタリストは、資金が豊富で、スタートアップにいち早く投資するコネもある。しかし多くの投資家は、Airbnbやウーバー、スナップチャットなど人気の非上場企業で儲ける資金力もコネもない。そこで、回り道をして一枚加わる方法を考えるのだ。

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