野田首相は総選挙を1年後に設定し「ニュー民主党」づくりに着手すべき

野田首相は総選挙を1年後に設定し「ニュー民主党」づくりに着手すべき

塩田潮

 8月の民主党代表選で「選挙なし」を明言した野田首相が登場して2ヵ月、突如、解散風が吹き始めた。

 11月3日、G20で消費税増税を国際公約とした点に関連して、首相が「増税法案を成立させ、実施前に国民に信を問うやり方にしたい」と述べたからだ。施行時期を明記しない増税法案を来年の通常国会で成立させ、総選挙で国民の審判を経た上で、次に施行時期を書き込んだ法案を通して増税実施というのが首相のシナリオと見られる。

 ところが、それに首相の再選戦略がからむ。来年9月に代表任期満了となる首相は、代表選前の総選挙を企図して増税法案成立直後の解散を仕掛けるのでは、と疑う声も出始めた。

 一貫して早期解散を要求する自民党との「話し合い解散」も、という見方もある。

 とはいえ、壁は高い。「1票の格差」是正の選挙制度改革が実現しなければ、最高裁が選挙無効の判決を出す可能性があるため、事実上、総選挙はできない。 一方、小沢元代表が来春に無罪となった場合、代表選出馬を視野に、代表選前の総選挙実施に反発し、党内対立再燃の恐れもある。安全運転型の野田首相は「増税法案成立、総選挙なしで代表選、代表再選後の総選挙」という展開を描いていると見る。

 だが、議員任期満了の2013年まで解散を延ばしすれば、麻生元首相と当時の自民党のように「解散できない首相」「自滅の与党」を余儀なくされ、野田首相も民主党政権も野垂れ死にとなる危険性がある。

 むしろ野田首相は解散をめぐる厳しい条件と環境に果敢に挑む「脱安全運転」の舵取りが必要だ。民主党政権はもともと4年間の期間限定改革挑戦政権として出発したが、多くの点で改革プランの挫折が明らかとなったいま、期間をリセットして「ニュー民主党」として再出発を図るしかない。

 なし崩しの増税作戦でなく、消費税問題も含めた新しい政権構想を策定する。来秋の代表選で是非を問い、その後に新構想を掲げて解散する。野田首相は総選挙を1年後に設定して、いまから「ニュー民主党」づくりに着手すべきだろう。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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