野田政権の12月危機、来春危機が現実になる日

野田政権の12月危機、来春危機が現実になる日

塩田潮

 「泥鰌首相」は就任時、自分の政権は「不人気」「低空飛行」「パワー不足」と覚悟していたのではないか。

 スタート直後に53~67%という高い内閣支持率が出たものの、最初の1ヵ月、首相自身は地を這う「泥鰌政治」に徹した。初の日米首脳会談でも、「陸山会事件」の一審判決で再燃した小沢問題でも、その姿勢を変えない。向こう受けや高望みを排し、目の前の壁を一つずつ越えていけば、やがて展望が開けると考えているのだろう。

 大震災からの復旧・復興、原発問題、超円高克服、経済再生など、横たわる壁は数多いが、野田首相が視野に入れる最大の壁が「財政」であるのは疑いない。13日の所信表明演説でも「国の歳入の半分を国債に依存」「国家の信用が厳しく問われる」と言及した。

 まず3ヵ月後の来年度予算案づくりで財源を確保できるかどうか。この壁を乗り越えたとしても、「国家の信用」の危機という高い壁が立ちはだかる。国の債務残高は今年3月で900兆円余、日本国債は95%が国内消化で、それを支えている国民の金融資産は1500兆円弱だが、ローンなどを差し引いた純資産は1100兆円以下で、余力は 200兆円足らずだ。毎年の国債発行額は40兆円以上だから、いまのペースなら3~4年で天井に届く。他に日本企業の預金を当てにしても残り5年程度で、そのときは「国家の信用」の危機、つまり国債価格暴落や国債金利急騰という破綻シナリオが現実化する危険性ありといわれる。

 消費税増税実施は次期総選挙の後だが、実施時期を書き込まない「増税宣言」の法案を来春までに、というのが既定方針で、野田内閣もその路線である。将来、増税して財政を健全化するから、と内外に向けて約束しなければ、破綻シナリオを阻止できないという理屈のようだが、本当に危機は近いのか、それとも財務省の「二人羽織」による首相操縦なのか、疑問が消えない。

 首相は何よりもまず正直に情報を開示して、国民にきちんと実態を説明しなければ、壁の克服は不可能だろう。それなしに先に進もうとすると、「国家の信用」の危機よりも、野田政権の12月危機、来春危機が現実になるのは間違いない。

(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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