電気料金の大幅上昇抑制へ柔軟な見直しと規制緩和を

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欧州の電力事情に詳しい山本隆三・富士常葉大学教授は、「送電網がつながっている欧州では、他国と電力をやり取りできるので、出力が不安定な再生エネをある程度まで拡大できた。事情が違う日本は普及を急ぐべきでなく、FITにもあまり頼らないほうがいい」と指摘する。

結局、FITは万能ではないのだから、再生エネ普及のきっかけに利用する程度と考えたらどうか。

FITは運用しながら、改良を重ねるべきだ。いずれは、買い取り価格決定を競争原理に委ねるような仕組みに改めてもいい。たとえば毎年、再生エネの普及を図るための導入目標量を決めたうえで、発電事業者の競争入札を行い、安い価格を提示した事業者から順に目標量に達するまで電気を買い取る。買い取り期間は、安い価格を提示した事業者ほど長くして優遇する。電力会社には、電気料金への転嫁も認める。こうすれば、コスト低減や技術革新へのインセンティブが働きやすい。

もう一つ、再生エネを普及させるために必要なのは規制緩和だ。普及を妨げている立地規制や建築規制は数多く存在する。農地法、森林法、建築基準法などだ。これらの規制は、事業者にとって事前調整や設備設置に要する時間と経費の増加要因となり、コストアップにつながる。斉藤哲夫・日本風力発電協会企画局長は、「事業者の煩雑な事前調整を減らすため、風車を設置できるエリアを国がゾーニングして決めてくれれば、普及は進む」と訴える。

再生エネ普及のためには、FITに過度に期待せず、制度を柔軟に見直しつつ規制緩和を併行させるべきだ。

(シニアライター:柿沼茂喜 =週刊東洋経済2011年9月17日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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