新国立競技場、船頭なき"大艦"の視界不良 なぜ建設費が2520億円に膨らんだのか
2019年のラグビーワールドカップ(W杯)と翌年の東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる、新国立競技場。賛否両論が渦巻く中、予定どおり、2012年11月のコンペで選ばれた、ザハ・ハディド氏のデザインに基づく設計で進められることが6月29日に決定した。
しかし、問題は山積みだ。完成予定の2019年5月まで、このまますんなりと工事が進むとは考えられない。
建設費はなぜ膨らんだのか
まず、2520億円という高額な建設費がネックとなる。コンペが行われた際の建設予算は1300億円。ところが、長い導入路を持つ巨大なザハ氏のデザインの建設費を、日本スポーツ振興センター(JSC)が試算してみると、3000億円まで膨らんだ。
そこで、ザハ氏のコンセプトを残し規模を縮小。昨年5月には1625億円という見積もりが出たものの、建築を請け負うゼネコンから「その金額では工事を請け負えない」との意見が出され、最終的に今回の額で建築契約が交わされることになった。
直近6回の夏季五輪開催都市(1996年のアトランタから2016年のリオ・デ・ジャネイロ)のメインスタジアム建設費(220億~620億円)と比べると、この金額がいかに莫大かは明らかだ。
原因は、ザハ氏のデザインした2本のキールアーチにある。キールとは、船の底の中央を船首から船尾まで通る「竜骨」と呼ばれる主要材のこと。それを上下逆にして地上に据え、建築物を支えるのがキールアーチだ。
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