東証・大証統合の前途多難《下》--取引所世界再編の猛威と国内統合の意義

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“箱”の整備とともに“中身”の魅力を上げることが大事

しかし、統合が、確実に収益性に結び付くという保証はない。「取引所には依然、公的機関としての意識も根強く残っており、それがはびこれば「1+1=1.5」ぐらいになってしまう恐れも十分ある」(野村総研の大崎氏)。経営効率を高めていくという統合の目的を、組織全員が共有できるかどうかが大前提となるだろう。

また、市場の活性化は取引所の努力だけで何とかなる問題でもない。「取引所は“インフラ”として非常に大事。ここに信頼性がなければ証券取引も活発化しない。ただ、取引所は“箱”ともいえ、中身が伴わないと意味がない。つまり、取引所に上場している日本企業の魅力を上げることが最も重要だ」(大和総研の横山氏)。

資本市場の活性化のためには、日本企業の魅力が高まり、外国の投資家が関心を持って投資してくれることが必要だ。日本企業の魅力を上げるには、日本経済全体の活力増大が求められる。
 
 東証に上場する外国企業数は、ピークの1991年末の125社から現在では12社にまで減少している。日本経済やジャパンマネーに対する海外企業の評価がバブル崩壊後に急低下した結果だ。

また、経済の活力のバロメーターともいえる株式新規公開(IPO)の数でも、昨年1年間で東証が26社にとどまる一方、中国の深圳は321社、香港も113社に上る。日本と中国とでは経済の発展段階が違うため単純に比較できないが、昨今は日本のベンチャー企業の間でも知名度向上や資金調達を狙ったアジア市場への上場が増えている。
 
 IPOの海外流出に東証も危機感を抱き、プロ向け新市場「AIM」のPRなど対策を講じているが、あまり成果が上がっていないのが現状だ。インフラである取引所の環境整備とともに、日本における起業や投資行動の活性化、それを後押しする政策や日本経済の成長期待がそろったときにこそ資本市場の発展が保証される。

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