東証・大証統合の前途多難《下》--取引所世界再編の猛威と国内統合の意義

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現物に強い東証、デリバティブに強い大証の統合の効果とは

国際的な再編の是非はさておき、国内で東証と大証が統合する意義やメリットはどれだけあるのか。

大和総研の横山淳・資本市場調査部制度調査課次長は、現物市場に強い東証とデリバティブ市場に強い大証が統合することで、相乗効果が働く可能性を指摘する。東証は現物株取引で国内約9割のシェアを独占。一方の大証は、日経225先物・オプションなどデリバティブ取引で国内約5割のシェアを持つ。
 
 「統合によって、原資産である現物と派生商品である先物・オプションの連関性が強まり、クリアリング(清算)の一本化などを通じて手数料の削減につなげることができれば、全体として取引が増える可能性がある」(横山氏)。

また、「取引所としていちばん大きな負担であり、課題でもあるシステム開発を共同化すれば、コスト削減が進み、市場参加者の利便性も高まることが期待できる」(横山氏)。

東証の斉藤惇社長も統合メリットについて、現先(現物と先物)一体化による「経営の安定化」を挙げる。ファイナンス機能を持つ現物市場とヘッジ機能を持つデリバティブ市場が合わされば、「機能としてバランスがとれる」(斉藤社長)。また、現物株に比べてデリバティブは収益性が高いため、東証にとっては業績面でもプラスとなりうる。

一方、大証に上場する日経225先物がシンガポール取引所やシカゴのCMEで取引されているように、デリバティブは現物株に比べて属地性が低く、国際的な競争にさらされやすい。そのため、大証としても経営基盤の強化策が求められていた。

統合によって取引の流動性が増し、「市場の透明性と公平性が向上する」(同)ともいう。大証には任天堂や村田製作所、ローム、日本電産など東証との重複上場銘柄も多い。統合で「流動性の分断」が解消されれば、価格の精緻性、取引の効率性が高まることも考えられる。

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