WR-Vの価格をライバルに合わせたホンダの苦境 高価格化したヴェゼルの穴を埋めるも課題あり

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WR-Vではパーキングブレーキはレバー式で、そのためアダプティブクルーズコントロールでの自動停車状態が保てず、時速25kmを下まわると作動が自動的に解除されてしまうのだ。

荷室やシートアレンジも異なる。ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を小さく畳める。後席の座面を持ち上げる機能も備わり、車内の中央に背の高い荷物を積載することも可能だ。

これらの機能がWR-Vには採用されず、シートアレンジは後席の背もたれが単純に前側へ倒れるだけ。しかも、広げた荷室の床に段差ができる。

シートを前倒ししても段差が残っていることがわかる(写真:本田技研工業)
シートを前倒ししても段差が残っていることがわかる(写真:本田技研工業)

燃費対策も異なる。ヴェゼルはガソリンGにもアイドリングストップを装着して2WDでは17.0km/L(WLTCモード燃費)となるが、WR-Vは非装着で16.2~16.4km/Lにとどまる。

以上の違いを考えると、ヴェゼルのガソリン車にe:HEV・Zに相当する充実装備のグレードを250万~260万円で用意すれば、WR-Vを発売する必要はなかったかもしれない。

お買い得度からも見えるWR-Vのターゲット

最近は各メーカーから「選択と集中」という言葉が聞かれ、メカニズムやグレードの種類を減らす傾向が見られる。

販売台数が伸び悩む状況でコスト低減まで迫られると、「選択と集中」で効率を高める必要も生じるが、「選択」の対象を誤るとユーザーニーズからはずれて売れ行きも下げる。今のホンダにはこのミスが多く、「オデッセイ」「CR-V」「シビック」などは、廃止したあとに復活させている。

WR-Vは価格を重視するユーザーをターゲットとしたため、各グレードの内容を見ると、装備と価格のバランスに特徴がある。一般的には中級グレードを割安にすることが多いが、WR-VはベーシックなXがお買い得だ。

Xはアルミホイールやインテリアのソフトパッドなどが非装備となる(写真:本田技研工業)
Xはアルミホイールやインテリアのソフトパッドなどが非装備となる(写真:本田技研工業)

Xにもホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、フルオートエアコンなどが標準装着され、中級のZに比べて18万円相当の装備を省いただけだが、価格は25万800円も安い。

Xは価格を200万円台に抑えて割安度を強調するため、209万8800円としたから、装備の割に安価になった。この価格はヴェゼルGの239万9100円と比べて約30万円安く、ヤリスクロス・ガソリンGの215万円と比較しても約5万円、下まわる。

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