「成長で財政は黒字化」と高をくくる人に伝えたい 借金をツケ回すコスト=利払い費が増えてゆく

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インフラ整備のための公共事業費に充当することを想定して発行される建設国債は、残されたインフラから便益を受ける後代の国民に、建設費の一部を負担してもらう役割を持つ。しかし、赤字国債は、結果的に社会保障給付などに充てられるもので、今年の社会保障給付は、今年給付を受けた国民にしか直接便益が及ばない。

もちろん、今を生きる国民が生きている間に後年その分の税負担を負えば責任を全うしたことになる。ただ、そのためには、赤字国債として後年にツケ回した返済負担を、生きている間にきちんと負う予算編成をしなければならない。

つまり、公債依存度を下げて、国債返済のために税財源をきちんと充てる予算編成が必要である。

景気対策で国債増発、震災後も高止まり

しかし、1990年代後半以降のわが国の一般会計における公債依存度は、さらに上昇した。

在任中に「世界一の借金王」と自嘲した小渕恵三首相の下で予算が編成された1999年度には、公債依存度は決算ベースで42.1%に達した。景気対策のために国債を増発したことが主因だった。

その後、小泉純一郎内閣の下で財政健全化に取り組み、2007年度に公債依存度は決算ベースで31.0%まで低下したが、その後リーマンショックが起き、2011年3月には東日本大震災が起きた。公債依存度は、2011年度決算で53.7%に達した。一般会計歳出の過半を借金で賄うという事態だった。

非常時には国債を発行して対応せざるをえないとしても、平時に戻れば国債への過度な依存から脱却してゆくべきものである。しかし、その後も公債依存度は高止まりした。公債依存度が決算ベースで40%を割るのは、消費税率を8%に引き上げた2014年度だが、3分の1(約33.3%)を割ることがないまま、コロナ禍を迎えた。

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