山崎元、余命宣告されて伝えたかった「幸福」の正体 「豊かさ・お金」と「自由」があればいいのか?

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自己承認感によって人をコントロールすることを最も大規模に成功させているのは宗教だろう。

自爆死するテロリストは、宗教に「洗脳」されて、「来世の幸せ」を信じて、自死をも厭わずテロに及ぶと一般的に理解されるようだが、これは本当だろうか?

思うに、宗教の「効用」は、来世の幸福への期待になどあるわけではない。現世で仲間から得られる自己承認感にある。

孤独な人ほどハマりやすい自己承認の落とし穴

「すべての」と言い切る自信はないが、多くの宗教は、信者が来世的な幸福をリアリティを伴って信じているからではなく、現世においてグループ内で自己承認感を得られる「現世利益」を得ることによって成り立っている。

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ある種の信者にとって、これを急に失うことは、自死をもってでも避けたい事態だ。

「来世」は、ただ「そうであるかもしれないことが否定はできない状況」として精神的な逃げ道として存在するならそれでいいのだ。

若者でも高齢者でもいい。孤独な人物を見つけたとしよう。彼(彼女)に「場」と「役割」を与えて、仲間内から評価されるような仕組みを作ると、いわゆるマインドコントロールはそう難しくなく可能なのではないか。

厄介なのは、対象者側でもそうした場を求めている場合があることだ。退職した高齢者についてしばしば問題になるのは、会社という場を失った彼(彼女)に居場所がないことだ。

山崎 元 経済評論家

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やまざき はじめ / Hajime Yamazaki

1958年札幌市生まれ。東京大学経済学部卒業。経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、株式会社マイベンチマーク代表(投資と投資教育のコンサルティング会社)と複数の肩書を持つ。三菱商事、野村投資信託、住友信託銀行、メリルリンチ証券など計12回の転職経験を生かし、お金の運用、経済一般、転職と自己啓発などの分野で活動中。著書に『超簡単 お金の運用術』(朝日新聞出版)『「投資バカ」につける薬』(講談社)『お金がふえるシンプルな考え方』(ダイヤモンド社)など著書多数。馬券戦略は馬連が基本。【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします。

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