松本人志「性加害騒動と活動休止」混沌招く5大論点 「まつもtoなかい」「ガキ使」などもどうなる?

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さらに、「なぜ証拠がないのか」と書くと「セカンドレイプ」と言われ、言葉を封じられる風潮があるも論点の1つ。この点は、あくまで被害女性を責めているような印象を与えず、一般論として「今後どうしていけばいいのか」を問いかける姿勢が必要でしょう。

松本さん不在で業界はどう変わるか

最後に5つ目の論点は、「テレビ業界やお笑い業界への影響」。

松本さんの活動休止によって現在、テレビ業界は大混乱の最中。性加害が確定したわけではなく、とはいえ、視聴者とスポンサーの心証はよくないだけに、「対応を検討中」の状態が続いています。

連絡の取れる8人のテレビマンに話を聞いたところ、「本当にどうなるかわからない」「できれば帰ってきてほしい」「いなくなったものと思わなければいけないかもしれない」「代役を立てるのか、番組を終了させるか、できれば他局の対応も見て決めたい」などと、はっきりとした答えは返ってきませんでした。

この点は、松本さんやダウンタウンの名前が入った番組名なのか。松本さんがどれくらいの役割を果たしていたのかなどの違いがあるため、各局各番組の個別対応になるでしょう。ただ、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)や「探偵!ナイトスクープ」(ABC・テレビ朝日系)などの人気番組や、「キングオブコント」(TBS系)や「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)などの人気賞レースが消滅する可能性は極めて低いとみられています。その理由は、テレビ局としてもビジネスとして続けたいうえに、松本さんとしても自分のせいでやめさせるわけにはいかないからです。

これまでバラエティは、ビートたけしさんが休養したときも、島田紳助さんが電撃引退したときも、続行させる番組があれば、「この機会に」と終了させる番組もあるなど、不在の影響を限定的なものに留めてきた過去があります。松本さんがいなければ各番組のムードが変わるのは間違いないものの、それでも多数の番組が終了したり視聴率が激減するなど総崩れとなることまでは考えにくいのではないでしょうか。

松本さんの活動休止でテレビマンが最も恐れているのは、このきっかけで松本さんがテレビからフェードアウトしてしまうこと。実際、業界内では、「近年、何度も引退をほのめかしていただけに、裁判の結果にかかわらず『もうええわ』と一線から退いてしまっても不思議ではない」という声が挙がっています。

さらに「お笑いがやりたい」としても、スポンサーなどのしがらみが活動休止の遠因となったテレビより、自由度の高い動画配信サービスやYouTubeなどに主戦場を移す可能性も考えられるでしょう。「後輩芸人たちにチャンスを与える」という意味でも松本さんがこれまでとは異なる道を選ぶ可能性は十分ありえるだけに、テレビマンたちは余計、番組の続行や代役の有無に神経を尖らせているようなのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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