日本郵便「封書30年ぶり値上げ」でも続く苦難 郵便物激減で4年後に「赤字額3000億円」と試算

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郵便物数は2001年度をピークに減少が続いている(撮影:今井康一)

「郵便事業の営業損益は2022年度に▲211億円と民営化後初めての赤字を計上したところ、当社においては、引き続き、賃上げや適正な価格転嫁の推進、郵便利用拡大のための取組を実施していくとともに、更なる業務効率化の取組を推進してまいる所存ですが、それでもなお、営業収益の減少・営業費用の増加を打ち返すことが難しく、今後の郵便事業収支は、別添のとおり、非常に厳しい見通しとなっております」

日本郵便の千田哲也社長は、総務省の玉田康人・情報流通行政局郵政行政部長に宛てた12月13日付の要望書にこう記した。

郵便事業の営業赤字は2023年度に919億円に拡大する。郵便料金を値上げしなければ、赤字はどんどん膨らみ、2027年度には3000億円を突破。2028年度には3439億円にまで悪化する――。千田社長はそんなグラフを要望書に添付した。

千田社長はこうした見通しを示したうえで、要望書を以下の文言で締めくくっている。

「今後とも、郵便サービスの安定的な提供を維持するためには、郵便物数(郵便営業収益)の大宗を占める第一種郵便物も含めた郵便料金の早期引上げをお願いせざるを得ない状況でございます。つきましては、上記総務省令の速やかな改正をお願いしたく、ご検討をお願いします」

上限を省令で定め、日本郵便が届け出

「上記総務省令」とは、郵便法施行規則第23条を指す。定形郵便物の料金上限を定める省令で、現在の上限は84円と明記している。この上限を超えない範囲で、日本郵便は総務省に郵便料金を届け出ている。重量25グラム以下の第一種郵便物、いわゆる定形封書は現在、この上限にぴったり張り付く84円だ。

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