東山紀之「まもなく引退」に危うさを感じる理由 "夢をあきらめた僕"は今後どうなっていくのか

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東山紀之
2回目の会見、話す姿勢に変化が見られた東山さん(撮影:尾形文繫)

また、このような過去のハラスメントに関する問題は、時代背景、当時の感情論、環境などの影響も考えられる分、判断基準が難しいところがあります。現在の感覚でいつまでさかのぼって糾弾されるべきものなのか。法律で裁くことが難しい場合、ネット上で“私刑”のように攻撃してもいいものなのか。芸能界だけではなく、すべての業界にも該当しうることだけに、東山さんだけを糾弾するのは不自然でしょう。 

これから29日に向けてメディアは「最後」「引退」を強調し、テレビ朝日も視聴率アップのためにその状態を望むでしょう。しかし、私たち一般層はそんな番宣絡みの状況に流されることなく、声をあげていいのかもしれません。 

あげるべき声は「今までありがとう」「おつかれさま」なのか。それとも、「引退なんてしなくていい」「被害者補償が終わったら戻ってきてほしい」なのか。会見のときに東山さんを批判したという人も、後者の声をかけていいように見えるのです。前述したように、最初の会見以降、これだけ状況の変化が見られた以上、批判から擁護に手のひら返ししたことにはならないでしょう。 

ただ、東山さんがすぐに「引退を撤回するか」と言えば、それは考えづらいところがあります。東山さんは最初の会見で「人生をかけて取り組む」と語っていただけに、少なくとも被害者救済の大半が終わるまで復帰の選択肢はないのかもしれません。 

被害の申し出は11月20日の時点で834人と発表されただけに先は長そうなものの、東山さんは現在57歳と俳優として10~20年くらいは務められそうな年齢。今年のさまざまな経験は今後の俳優人生に生かせるでしょうし、たとえば演技における悲しみ、怒り、赦しなどの深みが増す可能性を感じさせられます。 

本当の意味での「実力勝負」が始まる

もし東山さんが年内で引退し、その後に復帰するときがきたら、本当の意味での実力勝負がスタートするでしょう。これは東山さんに限った話ではありませんが、旧ジャニーズ事務所の恩恵やメディアの忖度を受けずに、どれだけ自身のスキルと存在価値を見せられるのか。 

実際、「必殺仕事人」は東山さんが主役を務めはじめた2007年以降、旧ジャニーズ事務所の松岡昌宏さん、大倉忠義さん、田中聖さん、知念侑李さん、岸優太さん、西畑大吾さんが出演してきました。そのキャスティングは一定の視聴率を確保する一方で、往年の必殺シリーズファンの中にはいまだに難色を示している人も少なくありません。 

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