東山紀之「まもなく引退」に危うさを感じる理由 "夢をあきらめた僕"は今後どうなっていくのか

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なぜ東山さんは引退を決意したのか。旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害問題で、同族経営の弊害を指摘された藤島ジュリー景子前社長からの打診を受けた東山さんは社長就任を決断。9月7日に行われた1回目の会見では、新社長として矢面に立つ形で大半のコメントを担いました。 

そこで東山さんはジュリー前社長から8月頭に打診を受け、「自分の運命だと(社長を)思って引き受けた」ことや「年内での引退」を発表。また、被害者救済の対応を聞かれた際、「夢や希望を握りつぶされた彼らと、“夢をあきらめた僕”でしっかり対話をすることがいいのかなと思います」と答えたところに無念さがにじみ出ていました。 

東山紀之
引退を表明している東山さんだが…(写真:尾形文繁)

引退を決断したのは、被害者救済はもちろん、ジャニーズのタレントと社名などを守るためであり、「東山さんの芸能人生を犠牲にすることで難局を乗り切ろう」とした方針がうかがえました。ただ会見では、性加害を「噂」レベルの話にとどめたこと、被害者救済の具体的な方法が提示されなかったこと、自身のハラスメント疑惑があることなどから、東山さんに対する同情の声は少なく「引退やむなし」のムードが漂っていたのです。 

しかしその後けっきょく「ジャニーズ」をあきらめて「SMILE-UP.」に社名変更したほか、東山さんは所属タレントのマネジメントを行う新会社の社長就任を辞退。11月には被害者補償がはじまり、11月30日までに23人への支払いが終了したことが発表されました。さらに今月に入って「STARTO ENTERTAINMENT」という新会社名と福田淳社長の就任が発表。東山さんが引退を決断せざるをえなかった当時とはまったく異なる状況に変わりました。 

「ありがとう」か「戻ってきて」か 

実際、「ジャニーズ」という社名は消え、新会社の社長は外部から招聘したマネジメントのプロフェッショナルで、同族経営は終わり、被害者補償もスタート。最初の対応にいくつかの失敗があったことこそ否めないものの、その後に批判されるべきところは見当たりません。 

そもそも会社や後輩たちを救うために、同族経営の加害者側に組み込まれるような社長就任を引き受け、引退を決断せざるを得なくなったのですから、「本当にこのまま引退でいいのか」「最後はおかしい」という声があがるのは自然に見えます。 

東山さん自身のパワハラ問題は、ジャニー喜多川氏の性加害とは別の話でしょう。社長になったことで一部メディアが大きく採り上げられましたが、もし被害を受けた人がいて謝罪や補償を求めるのなら、当事者があらためて対応すべきことであり、現段階では東山さんの芸能活動を制限するものにはなりえません。 

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