「診療所の儲けは8.8%」と示した財務省の人海戦術 猛反発の医師会、「恣意的」の批判は妥当なのか

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ただ、「機動的調査」の結果はほぼ全数を集計されたデータから出されたものである。EBPM(証拠に基づく政策形成)の観点からみれば、どのような印象を持つかが重要ではなく、データが指し示すエビデンスこそが重要である。

医療界は、賃上げを実現するためには診療報酬の大幅な引き上げを求めている。他方、財政制度等審議会の建議では、医療従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ、診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当と提言した。

診療報酬改定をめぐっては、何かと「日本医師会と財務省の戦い」という図式でみられがちだが、そうした見方は問題の本質を見誤る。

突出した利益は「政府の決めた価格が歪んでいる」から

多くの国民が、医療のためならば青天井でいくらでも喜んで負担を増やしてよい、というなら、高い経常利益率も容認されるかもしれない。しかし、物価上昇による生活苦に直面する国民が多い現状において、どんな理由であれ、さらなる負担増に反対する声が大きい。

他方、診療所の高い経常利益率は、自ら販売価格を決めてさまざまに営業努力を行った結果であれば、それは当然として得られた利益といえるかもしれない。しかし、社会保障分野の利益は、政府の規制がほぼなく競争性の高い業種の利益とはわけが違う。

前述のように、診療報酬の原資は、医療保険料と税金と患者負担である。そして、医療機関が行う保険診療は、診療行為ごとに政府が決めた単価通りに診療が行われ、医療機関に収入が入っている。政府が決めた価格付けが歪んでいると、それに引きずられて利益が大きく上がることも起こりうる。

問題の本質は、国民の医療に対する負担を増やしてでも診療報酬を増やすか、国民の負担増を抑制するならば診療報酬のアップも抑えるか、である。

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