コンビニが「レジ横ドリンク」に再注力する深い訳 冬場もスムージーやフラッペの展開を強化

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1つはキャッシュレス決済が急速に普及し、セルフレジの設置が進んできたことだ。レジ回りのオペレーションが簡素化したことで、店舗側に「余裕が生まれてきた」(ローソンの加盟店オーナー)。

他方でセルフレジの浸透が、接客が必要な揚げ物や中華まんなどのカウンターフードの販売にマイナスに働き、販売数の回復に苦心しているチェーンもある。冬場の利益を支えるおでんも、ここ数年の衛生意識の高まりで「急激に取り扱い店舗数が減った」(あるコンビニ本部)。これらファストフードは、コンビニが取り扱う商品の中でも粗利率が高い。レジ横ドリンクは、それらの伸び悩みを補填する役割としても期待される。

売れる時間帯もポイントだ。コンビニは一般的に朝と昼にピークタイムがあり、郊外であれば帰宅時間である夕方にも客数が増える。逆に言えば昼過ぎから夕方にかけては、日中でも客が少なくなる「アイドルタイム」。その分、伸びしろも大きい。

スムージーやフラッペは3社共通してこのアイドルタイムでの販売が好調だ。コロナ禍でテレワークが普及したことで、都心を中心にコンビニ大手の客数はまだコロナ前の水準を回復できていない。レジ横ドリンクは、客数改善策としても有望な商材といえる。

「健康」軸に習慣化を狙う

課題は冬の販売をどう伸ばすかだろう。

セブンは昨冬に行った1000店規模の実験で、「季節や地域を問わず、ある程度販売が見込める」と判断。今年はスムージーが全国に広がって以降、初めての“越冬”となる。

「健康」を前面に押し出すことで、他の健康軸の商品同様、習慣的に利用してくれる固定客の獲得を図る。11月には「明治ブルガリアヨーグルト」を材料に使用した新商品も投入する。セブンによれば、明治が看板商品であるブルガリアヨーグルトを原材料として供給するのは初めてだという。

セブンティーの販売を実験している都内の店舗(記者撮影)

ファミマも秋以降に過去の人気フレーバーのリニューアルを数量限定で販売したり、近年はアニメなどの外部コンテンツ、また有名飲食チェーンやメーカーとのコラボ商品を定期的に投入したりと、新商品で夏場以外の需要開拓を進めている。

コンビニではセルフ式コーヒーの登場以降、大きなイノベーションは生まれていない。そんな中、スムージーやフラッペが新たな客層を獲得するのか。ほかにもセブンは都内数店舗でセルフ式の紅茶「セブンティー」の販売を実験中だ。今後もコンビニのレジ横から目が離せない。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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