フジ「苦戦」日テレ「快走」、テレビ局の明暗 スポット広告が頭打ち、どこで差がついたか

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90年代に続き再びトップの座に返り咲いた日本テレビ

足元のスポット広告収入減から読み取れる、テレビ局の事業環境の厳しさは、広告主の業績環境の悪化、視聴者層の細分化、そして、スマートフォンなどの普及による動画を活用したマーケティング手法の多様化、などと考えられる。

タイムシフト視聴などの影響を考えれば、今の視聴率が必ずしも、放送コンテンツ供給者として、テレビ局の競争力劣化を表しているわけではないだろう。それでもHUT低下が続けば、スポット広告収入は2001年のピーク時、5000億円を超えることは難しい。2016年3月期通期のテレビ局5社合計のスポット広告収入は4584億円見込み。市場全体のパイが大きくならなければ、現行のビジネスモデルにおける競争軸は、シェア競争にならざるを得ない。そしてテレビ局のシェア競争とは、やはり視聴率なのである。

視聴率とは習慣である。一朝一夕には変わらないが、2015年に入り、視聴率競争に変化がでてきた。日本テレビの独走態勢が定着してきたのだ。

フジと日テレが分け合った時代

視聴率競争は10年単位で変化する。1980年代はフジテレビの時代。1981年にキャッチフレーズを「母と子のフジテレビ」から「楽しくなければテレビじゃない」へと改め、視聴者が気軽にテレビを楽しめる「軽チャー」路線へと踏み出した。バラエティとドラマを軸に、1980年代のフジテレビは強かった。

1990年代に強かったのは日本テレビだ。日本テレビの強さはまず「プロ野球巨人戦」の中継。1990~1999年の巨人戦中継の平均視聴率は20%超。またバラエティ番組では「マジカル頭脳パワー!」、ドラマでは「家なき子」が一世を風靡した。バラエティ、ドラマ、プロ野球という、バランスのいい視聴率構造が、1990年代の日本テレビを支えたのである。

2000年代に入ると、再びフジテレビが浮上している。しかしながら、フジテレビがバラエティとドラマ以外で、新たなジャンル開発に強くなったわけではない。その後、2010~2014年の4年間は、フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日の3社の混戦状態が続いた。

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