フジ「苦戦」日テレ「快走」、テレビ局の明暗 スポット広告が頭打ち、どこで差がついたか

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かつての視聴率三冠王だったフジテレビの勢いが今や見られない

在京キー局のスポット広告が冴えない。今年4月はかろうじて前年同月並みの水準を確保したが、5月は同6%減収、6月も10%減の見込み。上場するテレビ局5社合計の今2016年3月期上期のスポット広告収入は前年同期比1%増にとどまる。4~6月期の進捗を考慮すると、上期は厳しい展開となりそうだ。

テレビ局は何を読み間違えたのか。まず第一に円安による内需企業の業績悪化だ。製造拠点を海外に持たないメーカーにとって円安は逆風で、特に白物家電製品はその一例。急速な円安シフトは業績にマイナスである。売れば売るほど損が広がるから、広告などそもそも打てない。また円安によって素材や建材価格の上昇も無視できず、化粧品・トイレタリー、建築・不動産、食品など、主要な広告出稿業種がマイナスの影響を受けた。

若年層狙いでバラエティばかり

第二にHUT(総世帯視聴率)の低下だ。これは単に、テレビからネットへの視聴シフト、録画機能付きテレビ普及によるタイムシフト視聴だけでは、説明できない構造要因がある。

目下起こっているのは、「F1M1(20~34歳の男女)」層の取り合いである。首都圏のF1M1層の数は約600万人と言われているが、この少ない年齢層をターゲットに、ここ数年、すべてのテレビ局が照準を合わせて番組を制作してきた。バラエティ番組がその代表例だろう。各局の番組内容が似てくるために、差別化が難しくなり消耗戦に陥っている。

HUTを上げるためには、人口構成比の高い、「F3M3層」(50代以上の男女)を取り込む必要がある。しかし、この層はBS(衛星放送)が旅や歴史番組で積極的に取り込んでいるため、同じグループ内で、地上波とBSで視聴者層の食い合いが生じている。地上波として、購買行動にすぐ結び付かないこの層の取り込みは、広告単価低下に繋がる可能性があるので、積極的には取り込めないのだ。

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