岸田政権の台湾政策を支える「ネオ台湾派」の台頭 「リベラル」母体の新勢力の認識は正しいのか

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2023年8月8日、台湾の蔡英文総統との会談冒頭であいさつする自民党の麻生太郎副総裁(左、写真・協同)

岸田文雄政権の親台湾路線が目立つ。政権中枢を担う麻生太郎・自民党副総裁と萩生田光一・自民党政調会長が相次いで台湾を訪問、蔡英文総統との会談で「台湾有事」での日台共闘や、中国の経済威圧への連帯で合意した。

国交のない台湾当局者と政治・軍事面での協力をうたうのは、外交ルールに違反する言動だ。岸田政権が親台湾路線に自信を深める背景の1つとして、リベラル勢力の中から生まれた新しい「親台湾勢力」の誕生を挙げたい。

「ネオコン」と通底

この新勢力は、対中国大陸政策をめぐって深い亀裂が走る台湾で、「民主化」と「脱中国化」を進める与党民主進歩党(民進党)への支持を鮮明にし、「台湾有事」をめぐっては、岸田政権の対中抑止政策を支持し共振する。

伝統的な日本のリベラルを代表するメディアにも浸透し始めているこの勢力を、「ネオ(新)台湾派」と呼びたい。それは、アメリカでベトナム反戦運動が燃え盛った1960年代に反戦運動の担い手だった左翼学生らの一部が、1980年代になると「新保守主義者」に転向し、政界中枢や学界・財界で主導的役割を担った。

こうした「ネオコン」と生成過程が通底するためそう名付けたのだが、「ネオ台湾派」の言論領域は中国問題と台湾が中心のため「台湾」の名前を冠した。

彼らの特徴を整理し定義すれば、次のようになる。

第1は、あらゆる前提抜きで「民主(主義)」を絶対視する点が、リベラルを母体することを証明している。台湾政治の民主化と台湾化を絶賛し、台湾問題を中国の内政問題とは認めず、台湾の将来は台湾人の選択に委ねる「自決論」を支持し、台湾問題の国際化を主張する。

第2に、日本の対中・台湾政策では、岸田政権が進める対中軍事抑止と大軍拡路線には反対しないか、強く反対しない。

第3に、中国共産党の権威主義体制に反対し、香港、新疆ウイグル自治区での「人権弾圧」や民主派弾圧に反対し、市民同士の交流や結束による国際的連帯を主張する。

「ネオ台湾派」の主張の多くは、従来の右翼勢力を中心とする「親台湾派」の主張と共通しているが、反国民党(中国国民党)勢力として誕生した民進党(民主進歩党)支持が最大の特徴だ。

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