金融庁から見た「生命保険・損害保険」業界の姿 伊藤豊監督局長が語る業界の「課題と期待」

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伊藤 豊(いとう・ゆたか)/1963年生まれ。千葉県出身。東京大学法学部卒業後、1989年大蔵省(現財務省)入省。財務省秘書課長、金融庁総合政策局審議官などを経て、2022年6月から現職(撮影:尾形文繁)
昨春以降、アメリカをはじめとした中央銀行による政策金利の引き上げによって、株式相場や為替相場などにおける世界的なマネーの流れが一変。さらにロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー価格を中心とした物価高が急速に進み、国内外の経済にかつてないようなインフレの波が押し寄せた。
世界的なインフレが正負両面でさまざまな影響を及ぼす中、保険会社はどう向き合い、舵取りをしていこうとしているのか。10月23日発売の『週刊東洋経済臨時増刊 生保・損保特集 2023年版』では、生命・損害保険業界の最新事情を掘り下げている。誌面の中から、金融庁の伊藤豊監督局長のインタビューをお届けする。

──生命保険業界では契約者の主体となる生産年齢人口の減少や内需の縮小が、損害保険業界では自動運転による自動車保険の構造転換などがよく指摘されています。経営を監督する金融庁として、生損保の課題や期待することについてお聞かせください。

週刊東洋経済臨時増刊 生保・損保特集2023年版
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まず生命保険だが人口減少の問題があり、医療保険制度など公的な社会保障制度もいろいろと変わっていく中で、どこに収益機会を見つけていくのかが重要だ。

またその収益機会というのは、保険契約者に喜ばれるものでなければ、サステイナブル(持続可能)ではない。そのためにどのような商品を開発し、販売していくのかが経営のあり方として今後、一段と問われるはずだ。

販売では昨年以降、大きなチャネルとなっている営業職員による不祥事が相次ぎ問題となった。代理店とも関係があり、オンラインなどデジタルをどう駆使するかという課題もある中で、一体どのチャネルを磨き上げ、また掛け合わせることが顧客に最もフィットすることになるのか、模索が続いており依然として大きなテーマだ。

海外金利が「ものすごい勢い」で上昇

──インフレ下での生命保険の運用や財務状況については、どう見ていますか。

昨年から海外金利がものすごい勢いで上がってきた中で、外債でうまくリスクヘッジしたところもあれば、コストの増大でヘッジを外したところもある。含み損を抱えた会社もあり、運用面は(会社ごとに)かなり濃淡がある。ここ1、2年はマーケットが大きく変動するので、その備えは十分にしてほしいし、各社ともそこはよく認識している。

財務面でいうと、ESR(経済価値ベースのソルベンシー規制)が導入されると、各生保会社のALM(資産と負債の総合管理)とマッチすることになるため、その点についてはポジティブに受け止めているのではないか。

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