生成AIが豊かな社会をもたらすのはほぼ確実だが、それがユートピアになるとは限らない。生成AIは、さまざまな形のディストピアをもたらしうる。しかし、だからといって、AIの進歩を止めてしまえばよいわけではない。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第105回。
生成AI導入で社会はユートピアになるとは限らない
生成AIの導入によって生産性が向上し、社会全体としては豊かになる。これは、ほぼ確実に生じる。
しかし、だからといって、ユートピアが訪れるわけではない。AIがもたらすディストピアの世界は、まず、AIが人間の職を奪うという形で生じるだろう。突然仕事がなくなって失業する。あるいは収入が激減する。
これまでの技術は単純労働を代替した。生成AIは、知的労働を代替する。最初はフリーランス、非正規雇用の人々だが、正規の雇用者もいつまでも安泰であるわけではない。仕事が次第になくなる。新規雇用は減っていく。
この問題は、コピーライターなどの仕事についてはすでに発生している。ChatGPTが登場してからまだ1年も経っていないのにすでにその影響が現実化しているのは、驚くべきスピードだと言わざるをえない。今後 企業が生成、AIの利用を進めるに従って、必要が急激に増大する可能性がある。これは、さしせまった問題だ。
その反面で、所得と富が一部の人々に集中する その結果、所得と富の分配が、許容できないほど不公平になる。こうしたことを背景に社会不安が強まる。
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