あえて「嫌われ者」の新自由主義を擁護するワケ 「増税メガネ」の新しい資本主義は完全に的外れ

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実は「現実的」で優しい考え方をしているフリードマン

フリードマンが定義する新自由主義と聞くと、冷血な弱肉強食的拝金主義に満ちているのかと思うかもしれないが、意外に心温かな「いい人」の考えがそこにあって拍子抜けする。

とくに、困窮者の救済については、業界単位・職業単位ではなくあくまでも個人が単位であるべきで、困窮しているという事実だけで救済に値すると主張している。「民間の好意や慈善に任せるわけには行かない」とも述べていて、後の負の所得税構想(実質的にはベーシックインカムとほぼ同じ)につながる議論がすでにここにある。

税金は悪だという「リバタリアン」の考え方とは異なるし、失敗者(論文では「人生のくじで外れを引いた人」)を放置する極端な「能力主義」とも異なる、現実的で優しい考え方だ。

今の目で見ると、新規参入の自由はいいとして、独占をどの程度排除すべきなのか、国際競争やイノベーションの点で議論があるかもしれない。ビジネスの定石としては「完全競争はクソだ!」が合い言葉だ。また、アメリカ企業のハイテク分野席巻の背景には、実は集産主義的な政府のサポートがあったようにも思える。

過去30年くらいの日本は、「指示待ち集産主義」の民間経済に対して、司令塔が眠っていたような状況で、多大な時間が無駄になった。わが国は実質的にアメリカの属国なので、国民は政治に真剣な関心を持にくいのかもしれないが、政治家は無能でもいいとバカにしている間に、経済もすっかり三流になった。

また、理想はベーシックインカムだと筆者は考えるが、セーフティーネットの強調は新自由主義の良い特徴だと評価したい。フリードマンの議論はまったく古くない。

新自由主義を悪く言いたい人は、「どうせ、捨て扶持のような(少額でしょぼい)ベーシックインカムなのだろう」と言いたいかも知れないが、フリードマンはそのようなことを言っていない。後出しの決めつけは、やめたほうがいい。

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