13億を率いる中国権力中枢の最深部に迫った 「中国皇帝」を巡る人類最大の権力闘争
これは凄い本だ。大手新聞紙の発行部数が下落し始めて久しいが、本書で描かれるような記者の情報収集能力の高さを目の当たりにすると、新聞社というシステムが持つリソースの潤沢さを思い知らされる。
著者は朝日新聞の北京特派員として、6年弱にわたって中国報道の最前線に立ち、共産党内部の権力闘争を追い続けた。体を張って共産党員とのパイプを築き上げ、当局による幾度のもの取り調べに合いながらも、中国の権力の最深部に迫っていく様は、日本のジャーナリズムの衰退などどこ吹く風だ。
そして描かれる様々なエピソードはまさに桁違いのスケールである。副題にある「人類最大の権力闘争」はまったく言い過ぎではない。
善行も悪事も日本とは桁違い
ロサンゼルスには将来的なアメリカへの移住を見越した中国政府高官の愛人を住まわせる村が存在し、彼らは6億円もの豪邸をキャッシュで買って行く。愛人は高官たちが中国本土で違法に蓄えた資産のマネーロンダリングに使われるのだが、その規模は2008年までの10年で日本円にして14兆円を上回る。
全共産党員8600万人の中で、習近平の腐敗撲滅キャンペーンで処分された党員は2年で25万人に及ぶ。日本でも最近話題となった薄熙来が失脚までに築いた資産は7200億円、その薄の後ろ盾で同じく失脚した周永康の一家の摘発された資産は2兆2千億円などなどキリがない。
もちろん、ただ悪事を働いて蓄財すれば出世できるほど中国共産党は甘い世界ではない。前述の薄熙来が重慶市の代表であった際は、40もの河川の水質を浄化、貧困層のために100万もの住戸を建設し、国民的な人気があったという。善行も悪事も日本とは桁違いだ。
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