紙の本を読まないと、人は確実にバカになる 鈴木幸一×松本大「ネットの未来」を語る

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鈴木幸一氏(左)と松本大氏
日本におけるインターネットの草創期は、1990年代である。1992年12月に鈴木幸一氏はインターネットイニシアティブ(IIJ)の企画会社を設立し、1999年には松本大氏がマネックス証券を設立した。この2人が濃密に交流していたこと は、当時、2人を取材した記者にとっては"常識"で、実にエキサイティングな、起業シーンだった。
両社は千代田区神田錦町の同じオフィスビルに入っていた。ちなみに、すぐ隣のビルには北尾吉孝氏が率いるソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)の本社オフィスもあった。インターネットビジネス勃興期のホットスポットがあったのだ。
鈴木氏が日本のインターネットとIIJの歴史について綴った『日本インターネット書紀』(講談社)を上梓したのを機に、当時の秘話を2人に語ってもらった。後編は「日本のインターネットはどこへ進むべきか」。

 

前編:日本でインターネットをやるのは今も大変

おとなしくアメリカの掌に乗っていれば儲かる

──どのようにすれば、日本のインターネットビジネスも、より深まっていくのでしょうか。

鈴木:そもそも、インターネットは誰が仕切っているのか。本にも書きましたが、例えばドメインについては、ICANN(Internet Corporation for Assigned Named and Numbers)という世界のドメインを管理している団体があって、それはアメリカの民間団体です。

3月13日、鈴木氏はIIJの創業から現在まで、日本のインターネットの歴史を綴った『日本インターネット書紀』を上梓した(上の画像をクリックするとアマゾンの販売サイトにジャンプします)

ここは非常に難しい構造がある。こういうところには触らず、おとなしくアメリカの掌(てのひら)の上に乗って、アプリケーション・レイヤーだけをやっているほうが儲かる。

でも、IIJはエンジニアの会社ですから、スタンダードを取ろうと挑んだわけです。IIJが作り出したスタンダードは、インターネットをダイアルアップで接続するためのPPPソフトウェアや広域イーサネットなどがありますが、儲からなかった。僕がだめだったのでしょうが、うちがやってきたことは、日本では、いつも早過ぎて大変な思いをしてきた。

──なるほど。これからどっちの方向に進むべきでしょうか。過去のことを踏まえて、未来に向けての提言をお願いします。

鈴木:いやいや、提言なんていうものはありません。ただ、もうちょっと「インターネットは怖い」と思ったほうがいい。究極の分散は、究極の集中になる。これが大前提。情報統制できる社会というのは、どういうものなのか。そして、誰でも情報を発信して、それを誰でもタダで読める世界とはどういうものなのか。 それは、やっぱり怖いことだと思います。

あと、よく言うことですが、究極の集中になるということは、本当のビッグデータが機能するわけで、 一切プライバシーがないという社会は、すぐにやってくるかも知れない。それは、逆説ですが、素晴らしいことかもしれない。当然のことながら、反面では怖い。多くの人が怖いということばかり強調していますが、プライバシーなんてそもそも何なのか。世界中でプライバシーが大事だ、なんて本気で言っているインターネット関係者なんかいませんよ。

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