東芝でボロ儲け、4500億円超を稼いだファンド群 2017年からのファンド株主の利益を独自に試算

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売り抜けを急いだファンドがあった一方で、増資から2年以上経過しても売却しなかったファンドも、エフィッシモなどを筆頭に半数程度ある。

増資後の売買分析から見えてきたのは、比較的長期間保有しているファンドや、増資に応じて得た株式をいったん売却し、後から買い増したファンドが東芝の経営において存在感を発揮してきたということだ。

最強株主エリオットは出戻り組

「最強のアクティビスト」として恐れられているエリオットは、出戻り組だ。

エリオットは増資に応じて約334億円を出資した後、2018年11月までに1株だけ残して売却し、いったん約100億円の利益を得ている。その後、2021年に東芝株を保有していると表明。最終的に自社の幹部を社外取締役として東芝の取締役会に送り込んだ。

先述したファラロンも2018年4月以降に株式を買い増して大株主になった上、自社の幹部を社外取締役として送り込んでいる。

2022年3月の臨時株主総会で非公開化の検討を株主提案した3Dは、系列ファンドが増資に応じている。ただ、5%以上を取得したことを示す大量保有報告が出されたのは、2021年3月になってからだ。

いずれのファンドも「短期志向」というよりは長期で株式を保有している。加えて、単に株主還元などを求めるだけでなく、場合によって株式を買い増したり、社外取締役の派遣を提案するなど、経営への参加を重要視しているように映る。

だが、長期戦の構えを見せた株主に対して、東芝経営陣の対応は精彩を欠いた。

エフィッシモなどが取締役候補者を提案した2020年7月の定時株主総会では、議決権の集計ミスが発覚。後に第三者委員会がまとめた報告書で経済産業省が海外の株主に対して圧力をかけたことも明らかになった。

2021年4月にはイギリスのプライベートエクイティファンド、CVCから買収提案を受けたが、古巣のCVCとの関係を疑われた当時の車谷暢昭社長が辞任に追い込まれた。不透明なプロセスで株主からの不満はピークに達し、2021年6月の株主総会では、取締役会議長の選任が否決されてしまった。

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