東芝でボロ儲け、4500億円超を稼いだファンド群 2017年からのファンド株主の利益を独自に試算

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東芝株の売買で最大の利益を得たファンド株主は、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントだ。旧村上ファンド出身の日本人らが立ち上げ、シンガポールを拠点とする。

2017年3月の大量保有報告書によって、エフィッシモが東芝株8.14%を保有していることが明らかになった。さらに10%弱まで買い増した後、第三者増資を約840億円引き受けた。この時点での投資額は約1737億円になる。

2020年7月に一部を売却したものの、大半を約6年間にわたって保有し続けた。今回のTOBに応じて保有していた全株式を売却した。得た利益は合計で1300億円超と試算される。

ファラロンも600億円前後の利益

600億円前後の利益を得たとみられるのは、ファラロン・キャピタル・マネジメント。増資時にチヌーク名義で約358億円を出資し、2018年4月以降も新たに株式を取得した。ファラロンもTOBに応じて全保有株式を売却した。

次に多くの利益を得たとみられるのは、アメリカ・ニューヨークが本拠地のヘッジファンド、キングストリート・キャピタル・マネージメントだ。

キングストリートは増資前の2017年8月に647億円を投じて東芝株5.81%を取得した。さらに6000億円の増資にも応じて約250億円を追加出資している。

東芝株を断続的に売買し、一度は大量保有報告書の提出基準となる5%を切る水準まで売却。その後は再度買い増したが、2020年4月の変更報告書で保有比率が4.09%まで減少。それ以降の売買状況はわからない。

TOB開始までにすべての株式を売却していた可能性もあるが、仮にそのまま持っていたとすると、500億円程度の利益を得た計算になる。

第三者割当増資から2年間は、割り当てを受けた株主が株式を譲渡した場合、増資をした上場会社を通じて譲渡内容を公開することになっている。取引所の上場規程で求められているからだ(ただし、東芝から問い合わせを受けるまで報告しなかったファンドもある)。

公表情報が正しいとすると、増資に応じた60ファンドのうち、増資から2年間で28ファンドがすべての株式を売却した。株式数で見ても約半分が2年以内に売られている。中には、増資の割当前にカラ売りを駆使して東芝株を売り抜けたとみられる「超短期志向」のファンドもあった。

今回の試算では2017年以降に大量保有報告書によって東芝株の取得が確認されるファンド、および6000億円の第三者割当増資を引き受けたファンドについて、開示されている2年間の売却に加えて、2019年12月以降の売買も分析した。

それぞれのファンドの売却益は譲渡報告書、大量保有報告書をベースに試算。売買時期が不明な場合は該当期間の平均終値を代入して計算した。なお、売却が確認できなかった株式については、すべて今回のTOBに応じたと仮定し計算している。

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