「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?

拡大
縮小
クレディセゾン会長の林野宏氏(81、左)とセゾン投信前会長の中野晴啓氏(60、右)。2人はなぜ袂を分かったのか(写真:左が日刊工業新聞、右が今井康一撮影)
6月28日(水)、セゾン投信の株主総会で会長職を実質的に解任された、中野晴啓氏(60)。9月に新しい資産運用会社「なかのアセットマネジメント」を設立、日本株とグローバル株のアクティブファンド2本を主力とし、年内から年明けにかけて事業を開始したい意向だ。
もっとも、想定していたより、立ち上げは苦労しているようだ。資本金は当初12億円の予定で、まずは中野氏と、セゾン投信の元広報部長が各2500万円の計5000万円で会社を立ち上げた。その後は増資の形で、セゾン投信内部の人間2人と個人支援者10人から1.5億円を集めて2億円。さらに、銀行や保険など金融機関5社からも計10億円を募り、計12億円というのが当初の算段である。
10月16日(月)発売の週刊東洋経済10月21日号では「新NISA革命」を特集。2024年からスタートする新NISA(少額投資非課税制度)の仕組みや、お勧めの投資信託(ファンド)、さらにはセゾン投信をはじめ投信会社の最新動向まで、資産運用に絡む幅広いテーマを追った。

カギ握るファンドマネージャーの移籍

新会社設立が思ったほどスムーズに進んでいない原因は2つある。

週刊東洋経済 2023年10/21号の特集は『新NISA革命』。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。バックナンバー常備店はこちら

まず人の問題。注目されるのは、セゾン投信にいる人間で新会社の出資にも関わっている、現役のファンドマネージャー。日本株ファンドの運用の成功はこの人物の動向いかんなのは間違いない。グローバル株ファンドは海外運用会社への外部委託で補うつもりでいる。

ほかにメガバンク出身者も社外取締役に挙がっていたり、中野氏が長年コンビを組んで頼っていたアドバイザーも設立準備を手伝ったりしているもよう。なかのアセット側にしても、あまり露骨に引き抜けば、古巣からの訴訟リスクもまったくないとはいえず、慎重に事を進めていると聞く。

またお金の問題もある。新会社のスキームを描くにあたり、出資する金融機関にとっては、議決権のある株かない株かが焦点になっていた。中野氏は当初、増資で議決権のない株を与えようとしていたが、一部から反発の声があがったため、議決権を与えて資本調達を優先するもよう。株主が分散すれば、経営判断に時間を要することもありえよう。

新会社の拠点は、破綻した旧山一証券の兜町本社があった、兜町第一平和ビル(東京都中央区)。中野氏は個人のフェイスブックを通じ、運用からバックオフィスまで、新たなスタッフを募集しており、社員は15人程度で始まる見込み。バックオフィスに必要なシステムは日本資産運用基盤グループ(JAMP)に外注し、莫大とされるIT投資を最小限に抑える。金融庁からの認可も早く下りそうだが、年内はまだまだ紆余曲折があるだろう。

そもそもセゾン投信、いやクレディセゾンを含めたグループの”お家騒動”は、どんな経緯で起こったのか。

次ページ用意されたセゾン文化財団理事長のポスト
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT