大きな胸を「小さく」見せるブラが売れたワケ イノベーションのカギは"矛盾"の解決

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2010年の発売時点ではWeb通販限定の取り扱いだったところ、発売開始から1週間で当初の計画数量が完売し、翌年からは店頭でも販売されるようになっています。2010年4~8月で、計画の3倍を記録しました。

イノベーションが起きるときによく見られる現象

ワコールが開発した、大きな胸を「小さく見せるブラ」(写真提供:ワコール)

このブラジャーの開発前、ワコールではマーケティング調査を行ったのですが、面白い結果が出ています。イノベーションが起きるときによく見られる現象です。

2009年9月、20~40代の女性を対象に実施した「ブラジャーに求めること」のアンケート結果で、「大きな胸をコンパクトに見せたい」という女性は、わずか1割程度しかいませんでした。普通なら商品化に踏み切れないでしょう。しかし、1割の強いニーズに着目して、商品化に向かいました。

優れたイノベーションには、「すぐには理解されない」という特徴があります。「いいね!」が、即座に、しかも、たくさんつくようなアイデアは、イノベーションにつながる可能性が低いのです。

アンケート調査時には、9割の女性が「いいね!」をしなかったニーズに対応している点で、「大きな胸を小さく見せるブラ」はイノベーションにつながる要素を持っていたと言えます。

このブラジャーは、通常は「寄せて上げて」が当たり前とされていた状況に対して、「形を保ちながらサイズを小さく見せる」という、常識を覆すコンセプトで成功を収めました。

常識を覆し、かつヒットを実現したこの商品がなぜ生み出されたのか、その理由に迫ってみましょう。

思い込みを覆したブラジャーが実現したこと

大きな胸の女性を見ると、ついつい視線を向けてしまう男性はいると思います。世の男性、業界、そしてある面では女性自身も、「女性の胸は大きいほうがいい。大きく見せたいものである」――こう思い込んでいました。

しかし、目線を向けられる側の女性は、別の思いを持っていました。頻繁に胸に目線を向けられると、自分が「ひとりの個人」ではなく「女性」とだけ見られていることを、どうしても実感してしまうのです。それは、決して愉快なことではないでしょう。

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