5月7日に、イギリスで総選挙が行われた。選挙前の下馬評では、これまで二大政党と呼ばれた保守党と労働党のどちらも単独では過半数の議席が取れず、政党政治の母国ともいわれるイギリスで二大政党制が終焉するのではないか、と噂された。
しかし、保守党が単独過半数の議席を得る選挙結果となった。二大政党のうち一方が連立政権でなく単独政権を樹立する意味では、二大政党制は維持された。とはいえ、中小政党が得票率を伸ばした。二大政党が今後、イギリスの有権者の民意をうまく汲み取れないなら、中小政党の二大政党制に対する挑戦を受け続けることになりそうだ。
二大政党制には「死角」があった
イギリスの選挙制度は長年小選挙区制で、各選挙区で唯一の当選者になるには、小政党の候補者では難しく、保守党か労働党の二大政党のどちらかの候補者でなければならないとみられていた。だから、小選挙区制は二大政党制の源とみられていた。
確かに、小選挙区制は大政党には有利だ。
しかし、小選挙区制では、他の候補者より1票でも上回れば当選者となる。つまり、単純多数決投票である。だから、小政党の候補者でも民意をつかめば当選者になれる。
そして、それなりの数の選挙区で小政党の候補者が当選できれば、二大政党のどちらも過半数の議席が取れないという事態も起こりうる。二大政党がうまく民意を汲み取れなければ、こうした事態が起きても不思議ではない。今次総選挙で第3党となったスコットランド民族党の躍進も、スコットランドの選挙区にて辛勝で獲得した議席によるもので、単純多数決投票による小選挙区制のなせる業である。
このイギリスの総選挙の結果を見て、小選挙区制をどう評価すればよいだろうか。小選挙区制は、うまく民意を汲み取れないからよくない選挙制度とみる人は多いだろう。しかしそれは早計だ。
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