地味な銀行を「Tech企業に作り変えた」CEOの執念 「世界最高のデジタル銀行」DBSのすごい大変革

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シンガポールの銀行DBSは、かつては「イケてない」旧来型銀行だった。変革の秘密とは(写真:metamorworks/PIXTA)
世界で初めてデジタル人民元を使って支払いを回収できるサービスを中国で開始したシンガポールの銀行DBS。かつては「イケてない」旧来型銀行だったDBSは、いまや一般行員よりもテクノロジー人員のほうが数が多くなっており、「世界最高のデジタル銀行」と称されている。もはや金融機関というよりもテクノロジーカンパニーの様相を呈している。どうやってDBSはこのような変革を成し遂げたのか。『DBS 世界最高のデジタル銀行』(東洋経済新報社)の訳者が、DBSの組織文化とマインドセットの変革について解説する。

DBSは、元は「Development Bank of Singapore」の略称である。名前から推察できるように、政府系の、古くて、顧客満足度が低い金融機関であった。

そんなDBSの変革を推し進めたのがCEOピユシュ・グプタである。彼は2009年にDBSグループのCEOに就任し変革を進めた。その結果、2016年には『ユーロマネー』誌から世界初のデジタルバンク賞を受賞するに至った。彼はどうやってそんな変革を成し遂げたのか。

デジタルの口紅を纏うだけでは十分ではない

DBSのトランスフォーメーションの特徴は、①テクノロジー(会社の芯までデジタル化する)、②ビジネスモデル(自らをカスタマージャーニーに組み入れる)、③組織・文化変革(従業員全員をスタートアップに変革する)という3つの領域において変革を同時に推進した点にある。

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テクノロジーを新しいものにして、ビジネスモデルを変革しようとしても、それを動かす組織やヒトの行動が旧態依然としていては、加速する環境変化に対応し続けることはできない。グプタCEOは「デジタルの口紅を纏うだけでは十分ではない」と言う。

だからDBSの変革チームは、銀行の未来のゴールを詳しく調べることから始めて、その実現の障害となるものを洗い出した。

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