「レアメタルの宝庫」深海の資源採掘めぐり大紛糾 ベンチャーが小国抱き込み、国際会議でゴーサイン狙う

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TMC社を率いるジェラルド・バロン氏。国際会議でゴーサインが出ることを期待している(Getty Images)

世界の資源採掘関係者や環境保護団体が固唾をのんで見守る国際会議が今、カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカの首都キングストンで開かれている。

「国連海洋法条約」に基づいて設立された「国際海底機構」(ISA)の理事会が7月10日から2週間の会期で始まった。終了後には年次総会が5日間予定されている。日本ではほとんど知られていないが、世界初となる深海での鉱物資源採掘が認められるか否かが、そこでの最大の焦点だ。

排他的経済水域(EEZ)の外側に位置する公海は、その大部分を深さ200メートル以深の深海が占める。公海は国連海洋法条約によって「人類共同の財産」とされ、特定の国や企業が勝手に資源採掘を行うことは認められていない。そのことを定めた同条約には現在、日本を含む168カ国およびヨーロッパ連合(EU)が加盟している(アメリカは非加盟)。

ベンチャー企業が目をつけた「抜け穴」

深海が注目されているのには理由がある。電気自動車(EV)などの普及につれて、電池の材料となるコバルトやニッケルなど希少金属の奪い合いが世界規模で激化。未知の資源が眠る深海は、資源制約の課題を克服する「地球上で最後のフロンティア」とみなされているのだ。

その深海に、カナダのベンチャー企業が目をつけた。その名も「ザ・メタルズ・カンパニー」(TMC社)という企業が国際ルールに潜む抜け穴を見つけ出し、それを突破口に資源採掘へ一気に乗り出そうしている。

TMC社が着目したのは、「国連海洋法条約の実施に関する協定・附属書第1節第15」にある文言。そこには資源開発に関する手順として、「2年以内に開発ルールが定められなかった場合には、理事会は暫定的に作業計画を承認するものとする」と記されている。

2021年6月、この「2年ルール」実施の発議をしたのが、太平洋の島嶼国ナウルだ。人口1万人余りの小国ナウルとTMC社はパートナーシップを結ぶ関係にある。そしてパンドラの箱を開けた発議から、2年が経過した。

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