英語の名人「新渡戸稲造」地道で泥臭い英語習得法 東京人よりイギリス人と話すほうが楽だった

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新渡戸稲造の英語学習方法とは?
新渡戸稲造の英語学習方法とは?/出所:『吾輩は英語がペラペラである』
新渡戸稲造、夏目漱石、野口英世……彼らに共通する点がわかりますか。それは、成人する前に海外への留学を経験することなく、日本にいながらにして、ネイティブ顔負けの英語力を身につけたことです。
現代よりも英語学習法が確立されていない時期に、偉人たちはどのようにして英語をマスターしたのでしょうか? そして、現代の私たちが彼らの「英語学習法」から学べることとは?
吾輩は英語がペラペラである ニッポンの偉人に学ぶ英語学習法より抜粋、再構成してお届けします。

英語の意味をとことん究め『武士道』を著した英語名人

新渡戸稲造(1862~1933年)
教育者・学者。大学卒業後、アメリカやドイツへの留学を経て、母校の札幌農学校に教授として赴任。『武士道』を著し、内村鑑三、岡倉天心と並ぶ三大英語名人として知られる。国際連盟事務次長も務めた。

稲造は盛岡藩士の家に生まれました。江戸詰めの重臣だった父は、江戸で見つけたマッチやオルゴールなどの舶来品を盛岡に土産として持ち帰ることが多々あったといいます。幼い稲造が西洋の文化に関心を持つのは自然な成り行きだったのでしょう。やがて、稲造はかかりつけの医師のもとで英語を学ぶようになりました。その医師は進歩的な考えの人でしたが、英語に関しては本を少しかじった程度の知識しか持っていなかったため、稲造は苦労したそうです。

ABCの習得が終わり、「インク」「ペン」「ペンシル」「ペンナイフ」…といった具合に、文房具を表す英単語を教わっていたときのことです。医師は一つ一つの単語の意味を説明しながら講義を進めていましたが、「ペンナイフ」の番が来ると、医師は自分の手にペンナイフを持っていたにもかかわらず、「そんなものは一度も見たことがない」と言うのです。

その医師は「ペン」と「ナイフ」がそれぞれどんなものなのかを知っていましたが、それらを組み合わせた「ペンナイフ」というものがどうも想像できなかったようです。ここでいう「ペンナイフ」とは、鳥の羽根で作られたペンを削るナイフを指すわけですが、それとは別の方向に医師の妄想はどんどん広がっていきます。「きっと先端に小さなナイフが付いたペン軸のようなものに違いない」と結論づけた医師は、「ペンナイフ」を「ペン切りナイフ」と訳して、稲造に教えたのだとか。 

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