英語の名人「新渡戸稲造」地道で泥臭い英語習得法 東京人よりイギリス人と話すほうが楽だった

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
拡大
縮小

頻出英単語を2,000語覚えることで、話し言葉の約9割、書き言葉の約8割をカバーできることは、コーパス言語学、第二言語語彙習得を専門とする言語学者の投野由紀夫氏の研究でも証明されています。勉強熱心な人は4,000語、6,000語……と、さらに語彙を獲得しようと励むでしょう。

ところが、2,000語を超えて獲得した分が会話などで生かされる機会は急激に減り、せっかく単語を覚えても無駄な努力に終わってしまいます。よって、効率よく英語を学ぶのであれば、獲得する語彙量は稲造の言う通り2,000語で十分と言えるのではないでしょうか。

ただし、稲造の「一日三語主義」はなんでもよいから一日三語覚えようというものではありません。英単語の意味を脳裏に焼きつけ、書き取りも一つ一つ間違いのないようにするのがポイントです。とにかく2,000語だけは確実に覚えるという心意気をもって臨むことが重要であるといいます。それでは早速、稲造が実践した以下の方法に従って、「一日三語主義」を実行してみましょう。

1.覚えたい英単語三つをメモなどに書いて持ち歩きましょう。
(スマートフォンのメモアプリでも構いません)
2.ノートなどにスペルを繰り返し書きましょう。
3.その三語を大声に出して読み上げましょう。
4.(可能であれば)ネイティブスピーカーに正しく発音できているかどうか尋ねましょう。
5.これを毎日続けましょう。 

ファクトとトゥルース

近年、フェイクニュースが問題視される風潮の中で「ファクト(fact)」という言葉を聞く機会が増えました。似たような言葉に「トゥルース(truth)」がありますが、両者の区別はできますか。

実は稲造も、この二つの言葉の違いに悩んだ一人でした。悩みのきっかけは、以下のような会話の場面でした。

「君、時計を持っているか」

「持ってるよ」

「本当か?」  

この会話での「本当か?」という言葉には、「真理(truth)か?」ではなく、「事実(fact)か?」という意味が込められています。

一方、「本当だよ」という言葉は、「真理(truth)だよ」と「事実(fact)だよ」のどちらの意味にも用いることができてしまうのです。

日本語では一般的に「真理」「事実」と訳される「truth」と「fact」ですが、英語圏の辞書ではどのように定義されているのでしょうか。『Oxford Advanced Learner’s Dictionary 6th edition』で調べると、それぞれ以下のように掲載されています。

truth
the true facts about something, rather than the things that have been invented or guessed
日本語訳:作られた、もしくは推測された事象ではなく、何らかのモノ・コトに関する本当の事実
fact
used to refer to a particular situation that exists
日本語訳:事象が存在する特定の状況を表すのに用いられる 
次ページ稲造は「truth」と「fact」の違いをどのように捉えたのか
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT