米国でも実は「株主第一主義の修正」進む納得事情 新たな企業組織形態を導入する動きも広がる

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これは、上場会社が実質株主に関する情報を得られるようにすることで、上場会社が短期的な利益のみを追求する株主や濫用的買収者への対抗措置をとるきっかけを作り出すことが狙いであると指摘されている。

また、機関投資家および投資運用業者は、わが国におけるスチュワードシップ・コードと同様に、新たにエンゲージメントポリシーを策定し、公表しなければならないとされた。

さらに、機関投資家については、その主要な株式投資戦略が長期的な負債に応じた内容であり、中長期的な資産の増加に資するものであることについての説明を公にしなければならず、かつ、機関投資家の投資が投資運用業者を通じて行われている場合には、投資運用業者との契約が、①機関投資家の長期的な負債に応じた投資を動機づけるものであること、②投資先の上場会社の中長期的な、かつ非財務的なパフォーマンスをも考慮した投資を動機づけるものであること、③投資運用業者のパフォーマンスを評価する手法および評価対象となる期間が長期的なパフォーマンスを考慮しうるものであることなどに関する説明を開示すべきものとされた。

加えて、最終的な改正には盛り込まれなかったものの、SRDⅡの原案の段階では、各加盟国が、長期保有株主の優遇策として、複数議決権制度、税制上の優遇措置、一定期間以上保有した株主に対して報酬を与えるロイヤルティ配当またはロイヤルティ株式のいずれか1つ以上の措置を定め、かかる措置を、2年以上の任意の期間、株式を保有する者に対して与えることとする旨の条項も提案されていた。フランスのフロランジュ法に基づく二倍議決権制度などはその一例である。

欧州でも新たな企業組織形態が法制化

このように、欧州諸国では、アクティビスト・ファンドに典型的にみられるような過度な「ショート・ターミズム(短期的利益追求主義)」を法的に規制する動きが強まっている。

また、アメリカ各州におけるパブリック・ベネフィット・コーポレーションの法制化に対応するかのように、イギリスでは2005年にCommunity Interest Company(CIC)、ドイツでは2013年に公益有限責任会社、フランスでは2019年にミッションを有する企業を意味するEntreprise à Mission(使命を果たす会社)が、それぞれ新たな企業組織形態として法制化されている。

フランス食品大手ダノンは、2020年6月にフランスでEntreprise à Missionに移行した最初の上場会社となった。

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