印刷2強、大日本印刷と凸版印刷を分析する 印刷不況でも、生き残っているのはなぜ?

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従来型の本屋がどんどん減るなど、印刷業界をめぐる状況は厳しさを増すばかり。だが大日本印刷や凸版印刷はしぶとく生き残っている。なぜ赤字にならずに済んでいるのだろうか(写真:テンコ / PIXTA)
「印刷業=不況業種」との印象を持たれる方が多いかもしれません。もちろん市場規模自体は縮小し続けていますが、トップ2社の大日本印刷と凸版印刷に関しては、業績がそれほど悪化しているわけではなく、近年は横ばい、あるいは微増傾向です。一方、中小の印刷会社は、厳しい経営に迫られています。印刷会社のうち、従業員300人以下の中小企業が約99%を占めていることを考えますと、今は実質トップ2社の寡占状態となっているのです。なぜ、この2社は印刷不況でも業績を維持できているのでしょうか。最新の財務内容を分析しながら考えていきます。

出版不況とデジタル化で印刷市場は縮小が続く

印刷市場は、1990年代のバブル崩壊を境に拡大が止まり、1999年以降、縮小の一途を辿っています。ピークの1991年には8.9兆円の市場規模がありましたが、現在では6兆円を割り込む水準まで落ち込みました。

なぜ、ここまで落ち込んでしまったのでしょうか。一つは出版物のデジタル化、二つめは出版不況です。これらの要因によって、印刷需要そのものが減少してしまったのです。

さらに、2008年9月にはリーマンショック、2011年3月には東日本大震災が発生し、国内景気は急速に落ち込みました。企業は3Kと呼ばれる「交通費」「交際費」「広告費」を抑制。個人も消費を控えたため、印刷業界は一段と冷え込みます。

その結果、印刷業界全体で、業績が大きく悪化しました。元々緩やかな下降が続いていましたから、不況を脱した後も低迷が続いています。

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