大幅増益の東京電力と苦戦の関西電力を分析 原発事故後、明暗が分かれる電力2社

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関西電力(以下、関電)が、今年4月1日から平均で10.23%の電気料金値上げを申請しました。八木誠社長は、「原発の再稼働が大幅に遅れ、収益の悪化に歯止めがかからない」と説明しています。
関電の業績を見ると、確かに本業の儲けである営業利益は大きく落ち込んでいます。その一方で、東京電力(以下、東電)は大幅な増益となっているのです。この差はどこで生まれたのでしょうか。今回は、2社の平成27年3月期 第2四半期(2014年4~9月)の決算内容を見ながら、電力会社の現状を分析します。
生産性倍増委員会に出席した東京電力の數土文夫会長(右)と廣瀬直己社長 (写真:大澤誠)

電力自由化にらみ、大幅コスト削減した東京電力

まずは東電の業績を見てみましょう。決算短信の損益計算書(5ページ参照)を開きますと、売上高にあたる営業収益は前の期より3.7%増の3兆3341億円。営業費用は0.1%増の3兆508億円に抑えたため、営業利益は69.4%増の2833億円と大きく伸ばしています。

一方、関電はどうでしょうか。決算短信書の損益計算書(8ページ参照)を見ますと営業収益は、前の期より4.1%増の1兆6776億円でしたが、営業費用が7.4%増の1兆6733億円まで膨らんでいます。その結果、営業利益は92.1%減の42億円と大幅に落ち込みました。

いずれも営業収益はほぼ同じくらい伸びていますが、営業利益に大きな差が出ているのです。2社とも事業内容ほぼは同じですし、原発も全基停止したままです。なぜ、ここまで状況が異なっているのでしょうか。

一つは、東電が大幅にコストカットを行なったからです。同社は2011年3月に起こった原発事故以降、収益が急速に悪化していました。存亡の危機の中での原発事故の損害賠償や、事故に伴う原子炉の冷却などにかかる費用を除いても、本業の業績自体が悪化していたのです。2012年3月期以降、2期連続で営業赤字を計上していました。原発が停止しているため、火力発電に頼らざるを得なくなり、燃料費が膨らんだことが主な原因です。

同社は収益を確保するため、2013年9月に電気料金の値上げを行ない、2014年3月期にようやく増収増益となりました。

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