携帯GPS、「事前通告なしで捜査利用」の課題 国内最大シェアのiPhoneの情報は取れない

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警察庁によると、GPS位置情報の利用が想定されるケースは、振り込め詐欺事件など。犯罪グループはアジトを設け、そこから金銭を要求する電話をかけることが多い。だが捜査の手を逃れようと、短期間のうちにさまざまな場所を転々とするため、現場に踏み込んだときには「もぬけの殻」という例もあった。

GPSで場所を特定すれば、捜査時間を短縮できる可能性も高まる。そこで身柄や電話など、手口を示す証拠を一網打尽にする算段だ。

このほか、容疑者の居場所をつかめるかどうかが人質の生死に直結する誘拐事件や、指名手配犯の検挙などでも活用が想定されるが、現時点では犯罪の種類に関する制限はない。

さらに他人名義の携帯電話を容疑者が使っている場合や、関係者の位置情報を知ることで、犯人につながる可能性がある場合など、「捜査上必要なら、本人以外の情報を取得することがあるかもしれない」(警察庁・同)。

たとえ事後でも、こうした捜査の情報が基本的に公開されないことを考えると、一定の制限があるとはいえ、「自分の情報が見られているのかもしれない」という、携帯ユーザーの不安感を払拭するには至らない。

iPhoneの情報は取れない

また、捜査の効率化という点でも実は疑問が残りそうだ。そもそも、iPhoneなどの米国アップルの端末は情報が取れない。アンドロイド端末についても「位置情報を利用する」という項目をオンにしていなければ、取得不可だ。なかにはオンになっていても取れない機種もある。

総務省の担当者は「場合によっては、たとえばアップルに協力を依頼するケースもある」と話す。ユーザー本人へ通知しないことについても、携帯会社や端末メーカーによるシステム変更が必要になる。

こうした課題を解決するため、ガイドライン改正後も協議は継続されるという。プライバシー侵害に対する不安に耳を傾けることはもちろん、捜査での有効性についても、関係各所による取り組みがまだまだ必要になりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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