「大手は公正な競争を」新電力社長の切なる願い 中野・SBパワー社長が語る「大手に勝てぬ事情」

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東電に入社後、ソフトバンクグループに転じた中野明彦・SBパワー社長。電力ビジネスの経験が長く、政府の制度改革議論にもかかわっている(撮影・尾形文繁)
価格カルテルや顧客情報の不正閲覧など、不祥事が相次ぐ電力業界。大手電力と競合する新電力から公正な競争条件の確保を求める声が挙がっている。東京電力からソフトバンク系の新電力会社社長に転じた中野明彦氏に、問題の本質について聞いた。


――大手電力会社間でのカルテル行為が発覚し、公正取引委員会は3月30日、中国電力など5社に排除措置命令および総額1010億円にのぼる課徴金納付命令を出しました。公取委によれば、公共入札で関西電力が事前に自社が提示する価格水準を伝え、それを元に九州電力が応札額を引き上げていたとのことです。

正直そこまでしていたのかと驚くとともに、大変残念に思う。大手電力各社は設備インフラの整備などで協調して取り組むことから、社長など上層部が顔を合わせる機会も多い。そうした関係の中で問題が発生したのではないか。

――送配電部門が保有する新電力などの顧客情報を、大手電力の営業部門の社員が不正に閲覧し、関電のような一部の企業は顧客獲得活動にも使用していました。

こちらについても大変驚いた。電力システム改革が始まってから10年が経過する中で、チェックの緩みがあったのではないか。大手電力各社の上層部はコンプライアンスが機能していると思い込み、現場の実態を把握できていなかったのかもしれない。

大手電力のトップは、再発防止策の一環として社内研修を強化すると言っている。今さらながらと思うが、今まできちんと行われていなかったとも想像できる。内部統制も含めて、やるべきことがアップデートされていなかったのだろう。

大手の不正については、残念な気持ちでいっぱい

――不正閲覧では、御社のような新電力は被害者の立場です。

(業界では)けしからんと怒っている人もいる。私は電力システム改革に関する経済産業省の専門会合にもかかわってきた身でもあり、ある意味では(改革議論の)当事者。それだけに怒りというよりも、とても残念な気持ちでいっぱいだ。未然防止のためにもっとできることはなかったのかと思う。

――再発防止のために何が必要でしょうか。

内部統制については本来、当事者である大手電力がしっかり取り組むべきだが、ここまで問題が大きくなった以上、それだけでは不十分。経産省の電力・ガス取引監視等委員会(以下、電取委)には大手電力が正常な姿になるまで、一定期間にわたって内部に入ってチェックしてもらう必要がある。ただし、そうした状態があまりにも長く続くと、外部からしか改善の力が働かなくなってしまう。最終的には各社で内部統制機能がきちんと整うことが基本だ。

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