セブン&アイ「売上高10兆円超」でも消えない不安 最大の増益要因はアメリカでのガソリン販売

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好決算を発表したセブン&アイ・ホールディングスだが前途は多難だ(撮影:今井康一)

「国内小売業として初の売上高10兆円を突破」「過去最高益を達成」

4月6日、セブン&アイ・ホールディングスが発表した2023年2月期(2022年度)の決算。翌日の新聞各紙には勢いのある見出しが並んだ。

売上高にあたる営業収益は前期比35%増の11兆8113億円と日本の小売業で初めて10兆円を突破。本業のもうけを指す営業利益は、前期より約1100億円増加の5065億円と過去最高をたたき出した。

好調な決算を牽引したのが、海外コンビニ事業だ。アメリカのコンビニ運営子会社7ーEleven, Inc(SEI)の業績が、2021年5月に買収したガソリンスタンド併設型コンビニチェーンのスピードウェイの貢献で急拡大したのだ。

SEIの増益幅が全社を上回る

SEIの営業利益は前期比約76%増の3965億円。その増益幅は約1700億円で、セブン&アイ全体の増益幅を上回った。

SEIが躍進した最大の理由は、ガソリン販売による利益が大きく伸長したことだ。1ガロン当たりの粗利額は前期比27.2%も増加。背景の1つとして、アメリカ市場は損益分岐点の高い中小事業者が多く、仕入れ価格以上に販売価格が高騰したことがある。

2021年度には7.5ヵ月分しか計上されていなかったスピードウェイの買収効果が2022年度は通期で貢献したこと、円安によって収益が膨張した効果も大きく働いた。こうした要因によって、ガソリン販売による利益が約2000億円の増益要因となった。

好決算の中身はアメリカ頼み、もっといえば、ガソリン販売価格が高騰した要因が大きかったわけだ。他方、国内に目を向ければ、決して楽観視できる状況にない。

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