セブン&アイ「売上高10兆円超」でも消えない不安 最大の増益要因はアメリカでのガソリン販売

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4月6日の会見で井阪社長は、自らの退任要求を含めたバリューアクトからの株主提案について、「取締役の構成については会社の方向性が決まった段階で、4月中旬にも見解を公表する」と述べるにとどまった。

肝心の成長戦略が見えない

一向に進まない不採算事業の再編・テコ入れ。それに加えて市場関係者が注視したのが、2023年度の業績予想がわずか1.3%の営業増益にとどまる見通しになっていることだ。

SEIは粗利率の高いフレッシュフードや飲料品、プライベート商品の強化を行うが、2023年度はセブン&アイ全社とほぼ同様、1.7%の営業増益予想にとどまる。「原油価格上昇やガソリンの需給バランスなどさまざまな外部要因を勘案し、2023年度のガソリン粗利幅が2022年度水準を下回ると計画している」(担当者)ためだ。

成長の牽引役を担うはずのSEIが、外部環境によって収益のぶれやすい構造にあることは、セブン&アイにとって懸念材料の1つだ。

また中期ではスピードウェイを2兆円超で買収した際に発行した社債など、多額のロールオーバー(借り換え)も迫っている。アメリカの政策金利引き上げの影響を受け、社債市場の動向によっては当初想定以上の重荷になりかねない。長期では脱炭素の観点から、ガソリン販売に成長を依存している構造もリスクになる。

株主提案を受けていることもあり、注目されたセブン&アイの決算だったが、会見はオンラインでのみの実施。冒頭の挨拶以外は井阪社長ら経営陣の表情が映ることはなかった。こういう時こそ、経営陣が前面に出て、自らの言葉で広く語るべきだったのではないか。

外部環境に左右されやすい収益構造を抜け出し、成長戦略をどう描くか。流通の雄が歩む道のりは険しい。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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