なぜポッキー、ハイチュウは海外で売れる? 海外で売るにはコツがある!

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市場に本格的に根を下ろすためには、現地生産は不可欠だ。梱包費、運送料、通関費、輸送費、保険料など経費をプラスすると、輸出品の現地での小売価格はどんなに抑えても、日本の約2~2.5倍。競合品の3~5倍の価格になってしまう。

アメリカ市場におけるハイチュウの身上は「日常的に気軽に食べられるお菓子」。いかに独自性が高く、ほかに類似品がないとはいっても、高価格は致命的だ。

だからといって、いきなりの現地生産はあまりにリスクが大きすぎる。まずは、多少割高であっても輸出品からマーケットの手応えを探り、現地化の工夫を重ねながらターゲットを段階的に広げる。そして、成功の確証を得た後に現地での生産にシフトした森永製菓のプロセスは現実的だ。

海外マーケットには2つのタイプがある

前出の山下さんは、マーケットには「売れるものを売るマーケット」と、「売れるようにして売るマーケット」の2つがあるという。

ヨーロッパやロシアは、日本製品の付加価値や完成度の高さが通用する、いわゆる「売れるモノを売るマーケット」だ。これに対して、アメリカやアジアは「売れるように売るマーケット」。現地での使用シーンを踏まえたうえで、カレンダータイプのように商品を小分けにする、あるいは大袋にするといった売るための仕掛け、現地化が欠かせない。

そのためアメリカでは、パーティ需要を狙って500グラム入りのハイチュウも投入してきた。フレーバーも、ヒスパニック系の味覚を考慮して、マンゴー味を追加するなど、現地の嗜好を反映したラインナップを追求している。中国では婚礼市場向けに1粒個包装の商品やファミリー向けに袋タイプを発売しているが、これも「売れるように売る」現地化が欠かせないマーケットだからだ。

輸出品を通して「売れるようにするための現地化」で、ブランド認知を図ってきた森永製菓。これから消費地で商品をじかに生産できるようになれば、時間のロスなく商品を提供できるだけではなく、現地の嗜好をさらに敏感に察知し、迅速に反映した商品開発も可能となるだろう。海外への膨大な輸出コストがかからなくなれば、利益率もハネ上がる。現地生産スタートで、ハイチュウの売り上げや利益率の伸びにも弾みがつきそうだ。

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