なぜポッキー、ハイチュウは海外で売れる? 海外で売るにはコツがある!

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メンバーがショッピングモールを舞台にポッキーを分け合うCMを流し、JKT48を描いた真っ赤なワゴン車で、ターゲットであるティーンエージャーのいる高校や中学校に乗り入れるサンプリング大作戦も実施している。

また、イスラムのお国柄を考慮しての楽しい販促策もある。ラマダン明けにポッキーを食べてもらおうというアイデアだ。

広報の山本さんは言う。

「ポッキーのコンセプトは『シェアハピネス』です。各国の事情に合わせて、楽しい場面にはいつもポッキーがある、という形に持っていきたい。マインドシェア、記憶に残るお菓子にしたいのです。そのためには新しい情報を付加していかないと。

『ラマダン明けにポッキーを』という提案もそのひとつ。日本では過去に、『ポッキーオンザロック』や『旅にはポッキー』といったプロモーションを繰り広げて、鮮度が落ちない工夫をしてきました。海外でも同じです。ライフスタイル提案を積極的にしていかないと、ロングセラーにはなれません」

江崎グリコはポッキーの売り上げを2020年に10億ドル(日本を含む)と目標に掲げている。現在のポッキーの売り上げが4億ドル、あと5年で倍以上に持っていくために、同社は人材とマーケティングをポッキーに集中させている。海外での勢力はまだまだ増しそうだ。

人口ボーナス期に突入する市場にチャンス大

少子高齢化の日本とは違って、世界には働く世代の割合が増えている人口ボーナス期に突入する国がたくさんある。アジアだけじゃない。欧米だけじゃない。中東や南米、アフリカにもチャンスが横たわっている。まだまだ有望な市場が広がっているのだ。そして、こうした市場を着々と切り開いている日本のお菓子も少なくないのだ。

日本はこれまでたくさんの製品を海外に送り出してきた。車、船舶、オートバイ、家電製品。その多くが重工業製品だ。しかしながら、日本のものづくりをリードしてきたエレクトロニクスの衰退ぶりときたら半端ではない。

しかし、大量生産のお菓子ほど日本の製造業のよさが凝縮された産業はない。小さな商品だが、可能性は大きい。単価は安いが、将来性は高い。安くて小さなお菓子は閉鎖的なドメスティック製品のように見えて、実は7つの海を軽々と渡る実力派のグローバル製品だ。

次に日本のお菓子に手を伸ばしたとき、その小さな姿に秘められたとんでもない実力と将来性に、思いを馳せてはどうだろうか。

※部署・役職は2014年の取材当時のもの

三田村 蕗子 ジャーナリスト

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みたむら ふきこ / Fukiko Mitamura

福岡県生まれ。津田塾大学卒業後、マーケティング会社などを経て、現在フリーのジャーナリスト。流通業を中心に、ビジネス全般に関するテーマを追いかける。商売の仕組みや仕掛け、そこから生み出される世相や日本独自の消費傾向に関心を置く。主な著書に『ブランドビジネス』(平凡社新書)、『論より商い』(プレジデント社)、『世界一うるさい消費者にモノを売る50の方法』(同文舘出版)などがある。

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